Core Concepts
宇宙の大規模構造の観測から得られる赤方偏移空間歪みと重力レンズ効果の測定だけでは、修正重力理論とダークマターに作用する第5の力の影響を区別できないが、次世代の銀河サーベイで観測可能な重力赤方偏移を用いることで、両者を分離できる可能性がある。
本論文は、宇宙論における修正重力理論とダークマターに作用する第5の力の影響を区別する新しい方法について論じている。
問題提起
標準的なΛCDM宇宙論モデルは、宇宙の加速膨張や銀河の回転曲線などの観測結果を説明するために、ダークエネルギーとダークマターの存在を仮定している。
しかし、ダークエネルギーとダークマターの正体は依然として不明であり、その性質を解明するために様々な理論が提唱されている。
その中でも、修正重力理論とダークマターに作用する第5の力は、宇宙の大規模構造の進化に異なる影響を与えるため、両者を区別することが重要となる。
従来の方法とその限界
これまで、修正重力理論と第5の力を区別するために、赤方偏移空間歪み(RSD)と重力レンズ効果の測定が用いられてきた。
RSDは、宇宙の構造形成の速度を測定するものであり、修正重力理論や第5の力の影響を受けるとその値が変化する。
重力レンズ効果は、銀河や銀河団などの質量によって光が曲げられる現象であり、宇宙の幾何学構造に関する情報を与える。
しかし、RSDと重力レンズ効果の測定だけでは、修正重力理論と第5の力の影響を完全に区別することはできない。
新しい方法:重力赤方偏移の利用
本論文では、重力赤方偏移を用いることで、修正重力理論と第5の力の影響を区別できる可能性を指摘している。
重力赤方偏移は、強い重力場から放出された光の波長が、重力によって引き伸ばされる現象である。
この現象は、宇宙の構造形成やダークマターの分布に関する情報を与えるため、修正重力理論と第5の力の影響を区別する上で重要な役割を果たす。
シミュレーションによる検証
本論文では、SKA2(Square Kilometre Array Phase 2)のような次世代の銀河サーベイで観測可能なデータを用いて、重力赤方偏移が修正重力理論と第5の力の影響を区別できるかどうかをシミュレーションによって検証している。
その結果、重力赤方偏移を用いることで、両者を区別できる可能性が示唆された。
結論
重力赤方偏移は、宇宙論における修正重力理論とダークマターに作用する第5の力の影響を区別する上で、重要な役割を果たす可能性がある。
今後の観測によって、重力赤方偏移の測定精度が向上することで、宇宙の進化やダークセクターの謎に迫ることが期待される。
Stats
ダークエネルギーは約70%の宇宙密度を占めている。
SKA2 は、信号対雑音比80で重力赤方偏移を測定できると予想されている。
解析では、20 h⁻¹Mpc から 160 h⁻¹Mpc までの距離が考慮されている。
明るい銀河集団と暗い銀河集団の間のバイアスの差は1と仮定されている。
DES Year 1 のデータは、重力レンズ効果の測定に使用されている。
プランクの仕様は、CMBパワースペクトルの計算に使用されている。