Core Concepts
仮想資産サービス事業者の支払能力を評価するためには、分散型台帳技術上の仮想資産ウォレットデータ、商業登記簿の貸借対照表データ、監督当局のデータを相互参照する必要がある。
Abstract
本論文は、仮想資産サービス事業者(VASP)の支払能力を評価する手法を提案している。VASPは中央集権型の暗号資産取引所として機能し、顧客の暗号資産の交換、保管、移転を行う。しかし、分散型台帳技術上の取引記録が公開されているにもかかわらず、VASPの暗号資産保有は体系的な監査の対象となっていない。
本研究では、3つの異なるデータソース(暗号資産ウォレット、商業登記簿の貸借対照表、監督当局データ)を相互参照することで、VASPの支払能力を評価する手法を提案する。オーストリアに登録されている24のVASPを調査し、以下の知見を得た:
VASPは伝統的な仲介業者(ブローカー、両替所、ファンド)に類似しており、銀行とは大きく異なる。
2022年の年間取引高は約20億ユーロ、約180万人の顧客を抱えている。
4つのVASPについて、オンチェーンの暗号資産保有とオフチェーンの貸借対照表データを比較したところ、2つのVASPでのみデータが整合していた。
データ収集の課題として、ウォレットアドレスの帰属データの欠如、暗号資産の種類別の開示不足などが明らかになった。
監督当局による監査では、分散型台帳上の取引記録を十分に活用できていない。本研究の知見は、VASPの支払能力をより体系的かつ効果的に評価する上で有益であると考えられる。
Stats
VASPの年間取引高は約20億ユーロ
VASPの顧客数は約180万人