Core Concepts
Vangl2は、NF-κBシグナリングの中心的な転写因子であるp65のNDP52を介した選択的な自食作用分解を促進することで、炎症反応を抑制し、敗血症の進行を改善する。
Abstract
本研究では、Vangl2が敗血症患者の末梢血単核球で発現が上昇しており、LPS刺激によってマクロファージやリンパ節、脾臓などの免疫組織でも発現が誘導されることを示した。さらに、骨髄特異的なVangl2欠損マウスでは、LPS誘導性の敗血症ショックに対する感受性が著しく高まり、炎症性サイトカインの産生が増加していた。
機序解析の結果、Vangl2はNF-κBシグナル伝達の中心的な転写因子であるp65と直接結合し、PDLIM2 E3ユビキチンリガーゼを介してp65にK63型ポリユビキチン化を付加する。これにより、p65がNDP52 cargo受容体によって認識され、選択的な自食作用分解を受けることが明らかになった。一方、Vangl2欠損によりp65のユビキチン化とNDP52との結合が減少し、p65の分解が抑制されることで、過剰な炎症反応が惹起されていた。
以上の結果から、Vangl2は自食作用を介してNF-κBシグナリングを抑制することで、敗血症の進行を抑制する新規の制御因子であることが示された。Vangl2は炎症性疾患の治療標的となる可能性が期待される。
Stats
敗血症患者の末梢血単核球におけるVangl2 mRNA発現は健常者に比べ有意に上昇していた。
LPS刺激によりマクロファージ、好中球、腹腔マクロファージでVangl2 mRNA及びタンパク質の発現が誘導された。
Vangl2欠損マウスはLPS誘導性の敗血症ショックに対して著しく感受性が高く、早期に死亡した。
Vangl2欠損マクロファージやリンパ球ではLPS刺激によるp65のリン酸化と核内移行が亢進し、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α、IL-6)の産生が増加していた。
Quotes
「Vangl2は、NF-κBシグナル伝達の中心的な転写因子であるp65と直接結合し、PDLIM2 E3ユビキチンリガーゼを介してp65にK63型ポリユビキチン化を付加する。」
「Vangl2欠損によりp65のユビキチン化とNDP52との結合が減少し、p65の分解が抑制されることで、過剰な炎症反応が惹起されていた。」