アルツハイマー病から保護する新しい遺伝子変異の発見

Core Concepts

APOE4遺伝子を持つ個人に見られる新しい遺伝子変異は、アルツハイマー病のリスクを70%減少させる。

Abstract

この研究では、APOE4遺伝子を持つ3,500人以上の70歳以上の高齢者のゲノムを解析し、アルツハイマー病に対する保護効果を持つ2つのFN1遺伝子変異を発見しました。
FN1遺伝子は、血液脳関門を形成する血管の線維性糖タンパク質フィブロネクチンを発現します。アルツハイマー病患者では通常よりもフィブロネクチンが過剰に存在しますが、FN1変異を持つ個人はアミロイドβが脳から排出される能力が高く、症状の発症が遅れる可能性があります。
この変異は、APOE4遺伝保有者の1-3%、つまり20万人から62万人に存在すると推定されています。研究者らは、フィブロネクチンを減少させる治療法の開発に期待を寄せています。
研究の限界として、変異保有者の脳内アミロイド濃度と線維化の関係を縦断的に調べられていないこと、変異の稀少性から病理学的評価ができていないことが挙げられます。

Stats

APOE4遺伝子保有者のアルツハイマー病リスクが70%減少
FN1遺伝子変異(rs116558455、rs140926439)を持つ個人は、症状発症が3.4年遅れる

Quotes

「アルツハイマー病は脳内のアミロイド沈着から始まるが、その後の変化が症状の発現につながる」
「フィブロネクチンを減少させる治療法は、この難病との戦いで重要な一歩となるだろう」

Key Insights Distilled From

New Genetic Variant May Guard Against Alzheimer's

by Eve Bender at www.medscape.com 05-02-2024

https://www.medscape.com/viewarticle/new-genetic-variant-may-guard-against-alzheimers-high-risk-2024a10008h3

Deeper Inquiries

FN1遺伝子変異がアミロイド排出能力を高める具体的なメカニズムは何か。

FN1遺伝子変異によって、フィブロネクチンが過剰に生成されることで、アミロイドが脳から排出される能力が向上します。通常、アルツハイマー病患者は脳内にアミロイドが蓄積されますが、FN1変異を持つ人々は症状が現れる前にアミロイドを脳から排出する能力を持っています。

APOE4以外の遺伝子変異がアルツハイマー病リスクに与える影響はどのようなものか。

研究では、APOE4以外の遺伝子変異によって、アルツハイマー病リスクが低下する可能性が示唆されています。具体的には、FN1遺伝子の特定の変異がAPOE4保有者においてアルツハイマー病のリスクを70%減少させることが示されました。

フィブロネクチンの機能と脳内アミロイド蓄積の関係は、他の神経変性疾患にも当てはまるのか。

フィブロネクチンは血液脳関門に存在し、アミロイドの脳内蓄積を制御する重要な役割を果たします。このようなメカニズムはアルツハイマー病だけでなく、他の神経変性疾患にも応用可能性があると考えられます。他の疾患においてもフィブロネクチンの役割が同様に重要である場合、この研究結果は神経変性疾患全般における新たな治療法の開発につながる可能性があります。