新時代の抗生物質? 「二重選択性」で有害菌を標的にしつつ腸内細菌叢を保護する

Core Concepts

新しい抗生物質「ロラミシン」は、グラム陰性菌に特異的に作用しつつ有益な腸内細菌叢を保護する革新的な仕組みを持っている。これは、薬剤耐性菌への新たな治療法となる可能性がある。

Abstract

本研究では、グラム陰性菌に特異的に作用しつつ腸内細菌叢を保護する新規抗生物質「ロラミシン」が開発された。
ロラミシンは、グラム陰性菌の外膜輸送システム「Lolシステム」を阻害することで、薬剤耐性グラム陰性菌を標的とする。一方で、グラム陽性菌や有益な腸内細菌には影響を及ぼさない。
この二重選択性により、ロラミシンは薬剤耐性グラム陰性菌感染症を治療しつつ、二次感染のリスクを低減できる。マウス実験では、ロラミシンが薬剤耐性菌血流感染症や肺炎を治療し、腸内細菌叢を保護したことが示された。
この新しい作用機序は、1968年以来初めての画期的なグラム陰性菌標的抗生物質の開発につながる可能性がある。今後の臨床試験が期待される。

Stats

ロラミシンは、細胞培養実験で130株の薬剤耐性グラム陰性菌を死滅または減少させた。
マウス実験では、ロラミシンが薬剤耐性菌血流感染症と肺炎を治療し、腸内細菌叢を保護した。

Quotes

「ロラミシンは新規の標的に作用する。これは非常に重要な発見だ。1968年以降、新しい抗生物質は既存の抗生物質の改良か、同じ標的に作用するものしか登場していない。これは本当に新しい化合物であり、最も独創的で興味深いと思う。」

キム・ルイス博士(ノースイースタン大学)

Key Insights Distilled From

New Era? 'Double Selective' Antibiotic Spares the Microbiome

by Sari Harrar at www.medscape.com 06-07-2024

https://www.medscape.com/viewarticle/new-era-double-selective-antibiotic-spares-microbiome-2024a1000apx

Deeper Inquiries

ロラミシンの臨床試験の進捗状況はどうなっているか?

ロラミシンはまだ臨床試験の初期段階にあります。研究者たちは、ロラミシンが耐性菌に対して効果的である一方で、耐性の発生リスクがあることを認識しています。今後の研究では、ロラミシンの改良や他の抗生物質との組み合わせによる効果的な治療法の開発が期待されています。

ロラミシンの耐性菌出現リスクをどのように低減できるか?

ロラミシンの耐性菌出現リスクを低減するためには、薬剤の改良や他の抗生物質との併用が考えられます。研究者たちは、ロラミシンの構造を調整したり、他の抗生物質との相乗効果を検討することで、耐性菌の発生を抑制する可能性があります。また、ロラミシンを攻撃対象とする新たな化合物の発見も、耐性菌のリスクを軽減するための重要な手段となり得ます。

ロラミシンの作用機序は、他の細菌感染症治療にも応用できる可能性はあるか?

ロラミシンの作用機序は、他の細菌感染症治療にも応用可能性があると考えられます。特に、ロラミシンがGram陰性菌に対して特異的であり、腸内微生物を保護しながら病原菌を攻撃する能力を持つことから、他の感染症治療においても有効な選択肢となり得ます。さらに、ロラミシンのような新しい抗生物質の開発は、耐性菌に対抗するための革新的な方法を提供し、将来的に他の細菌感染症治療にも応用される可能性があります。