AMM流動性の裁定損失と収益性の包括的な実証分析

Core Concepts

AMM流動性の手数料収入が裁定損失を十分に補償していないことを明らかにした。特に、より効率的なUniswap v3プールと比較して、Uniswap v2プールの方が収益性が高いことが示された。また、ブロック時間の短縮が裁定損失を大幅に削減できることを定量的に示した。

Abstract

本論文は、自動化された市場メーカー(AMM)の流動性提供者(LP)の収益性を包括的に分析した実証研究の結果を示している。
主な知見は以下の通り:

多くの大規模なUniswapプールにおいて、手数料収入が裁定損失を十分に補償していないことが明らかになった。これは、これらのプールに数十億ドルもの流動性が提供されている現状を疑問視させる。一方で、取引量の少ない一部のプールでは収益性が確認された。

Uniswap v2プールの方が、同じ手数料レベルのUniswap v3プールよりも顕著に収益性が高いことが示された。これは予想外の結果であり、AMM設計の違いによる影響を示唆している。

ブロック時間の短縮が裁定損失を大幅に削減できることを定量的に示した。ただし、その程度は取引ペアによって異なり、12秒のEthereumブロック時間から100ミリ秒に短縮した場合、損失は20%から70%減少する。

これらの知見は、AMM流動性の長期的な持続可能性を考える上で重要な示唆を与えている。特に、手数料収入と裁定損失のバランスを改善するAMM設計の検討が必要であることを示唆している。

Stats

Uniswap v3 WETH-USDC 0.05%プールでは、手数料収入が裁定損失の約80%に過ぎない。
Uniswap v2プールでは、手数料収入が裁定損失の3倍以上になることがある。
ブロック時間を12秒から100ミリ秒に短縮すると、裁定損失が20%から70%減少する。

Quotes

"多くの大規模なUniswapプールにおいて、手数料収入が裁定損失を十分に補償していないことが明らかになった。"
"Uniswap v2プールの方が、同じ手数料レベルのUniswap v3プールよりも顕著に収益性が高いことが示された。"
"ブロック時間の短縮が裁定損失を大幅に削減できることを定量的に示した。"

Key Insights Distilled From

Measuring Arbitrage Losses and Profitability of AMM Liquidity

by Robin Fritsc... at arxiv.org 04-10-2024

https://arxiv.org/pdf/2404.05803.pdf

Deeper Inquiries

AMM流動性の収益性が低い理由はなぜか。LPはなぜ依然として大量の流動性を提供し続けているのか。

AMM流動性の収益性が低い主な理由は、LP（流動性プロバイダー）がアービトラージャーに対して被る損失が、手数料から得られる収益を上回っているためです。LPは、アービトラージャーによる取引による損失を被る一方で、手数料収入がそれを補うほどの額には至っていないことが示されています。この状況は、LPにとってリスクが高い状況であり、LPがアービトラージャーに対して不利な立場に置かれていることを示しています。
LPが依然として大量の流動性を提供し続ける理由は複数あります。まず、LPは手数料収入だけでなく、市場リスクをヘッジする必要があるため、アービトラージャーに対する損失以上に報酬を得る必要があると考えられます。また、LPは将来の価値を見据えて流動性を提供しており、長期的な視点から収益性を評価している可能性があります。さらに、LPは他のリスクや市場の変動に対するヘッジとして流動性を提供している場合もあり、それがLPの動機となっている可能性があります。

AMM設計の違いがUniswap v2とv3の収益性の差異をもたらしている可能性について、どのようなメカニズムが考えられるか。

Uniswap v2とv3の収益性の差異に影響を与える可能性があるメカニズムにはいくつかの要因が考えられます。まず、Uniswap v3ではLP同士の競争が可能であり、アクティブなLPが価格変動に応じて流動性を最適化することができるため、手数料収入が最適化される可能性があります。これにより、収益が最適化されるLPに対して、収入が最適化されないパッシブなLPの手数料収入が減少する可能性があります。
さらに、Uniswap v3の設計により、流動性プロバイダーが価格変動に対応して流動性を最適化できるため、手数料収入が競争によって分散される可能性があります。一方、Uniswap v2ではこのような機能が制限されているため、手数料収入の分配が異なる可能性があります。このようなメカニズムがUniswap v2とv3の収益性の差異に影響を与えている可能性が考えられます。

ブロック時間の短縮以外に、AMM流動性の収益性を高める方法はないか。

ブロック時間の短縮以外に、AMM流動性の収益性を高める方法としては、以下のようなアプローチが考えられます。

手数料構造の最適化: AMMの手数料構造を最適化することで、LPにより多くの収益をもたらすことができます。手数料率や手数料の収入方法を見直し、LPにとってより魅力的な条件を提供することが重要です。

リスク管理の強化: LPが市場リスクやアービトラージャーによる損失に対してより効果的にヘッジできるような仕組みを導入することが重要です。リスク管理ツールや保護機能を提供することで、LPの収益性を向上させることができます。

新たな収益源の開拓: LPに新たな収益源を提供することで、収益性を高めることが可能です。例えば、LPによる流動性提供以外のサービスや機能を導入することで、LPの収益性を向上させることができます。

これらのアプローチを組み合わせることで、AMM流動性の収益性を高めるための総合的な戦略を構築することが重要です。LPの収益性を向上させるためには、様々な側面からのアプローチが必要となります。