この研究では、人間の胚の圧縮の力学的メカニズムを明らかにしている。
まず、人間の胚を用いた顕微吸引実験により、細胞間接触部の張力は一定に保たれるのに対し、細胞-培地界面の張力が4倍に増加することが示された。このことから、細胞-培地界面の張力の増大が人間の胚の圧縮を駆動する主要な力学的要因であることが明らかになった。
次に、マウス胚との比較から、人間の胚の圧縮は進化的に保存された機構であるものの、定量的には人間の胚の方がより非効率的な力学的戦略を採用していることが示された。
さらに、細胞の収縮性と細胞間接着の阻害実験の結果、両者は圧縮に必要不可欠であるものの、収縮性のみが圧縮を駆動する張力を制御することが明らかになった。また、自然に圧縮に失敗する胚の解析から、収縮性の欠陥が圧縮不全の原因であることが示唆された。
以上より、進化的に保存された細胞の収縮性の増大が、人間の胚の最初の形態形成運動を駆動する力を生み出すのに必要不可欠であることが明らかになった。
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