Core Concepts
シェーグレン症候群の発症初期において、神経刺激によるCa2+シグナルの空間的特性の変化、TMEM16aチャネルの活性低下、ミトコンドリアの形態と機能の障害が、唾液分泌低下に寄与している。
Abstract
本研究では、シェーグレン症候群の発症初期を模倣したマウスモデルを用いて、唾液分泌低下の原因を明らかにすることを目的とした。
まず、DMXAA投与によりSTING経路が活性化されたマウスでは、唾液分泌が著しく低下していることを確認した。次に、in vivo Ca2+イメージングを行ったところ、神経刺激によるCa2+シグナルの振幅は増大していたものの、その空間的特性が変化し、基底側への伝播が亢進していた。
さらに、TMEM16aチャネルの活性は低下していたが、チャネルの発現量や局在に変化はなかった。STED超解像顕微鏡観察により、TMEM16aとIP3受容体の近接性が障害されていることが明らかになった。
一方、ミトコンドリアの形態は断片化し、膜電位の低下や酸素消費率の低下など、ミトコンドリア機能の障害も認められた。
以上の結果から、シェーグレン症候群の発症初期には、Ca2+シグナルの空間的特性の変化、TMEM16aチャネルの活性低下、ミトコンドリア機能の障害が唾液分泌低下に関与していることが示唆された。
Stats
対照群の平均唾液分泌量は130.1±48.96 mg、DMXAA投与群は63.71±30.41 mg
DMXAA投与群の唾液分泌量は対照群の51.99%に低下
DMXAA投与群のミトコンドリア数は対照群に比べ22.16%±4.95減少
DMXAA投与群のミトコンドリアの伸長度は18.35%±4.62低下、分岐度は20.7%±7.78低下
DMXAA投与群のミトコンドリア膜電位は有意に低下
DMXAA投与群の基礎呼吸は25%低下、最大呼吸は47%±9.19低下
Quotes
"早期のシェーグレン症候群では、分泌組織の破壊自体が引き起こす乾燥ではなく、刺激-分泌連関機構の欠陥が先行し、病態進行に寄与する可能性がある。"
"適切なCa2+シグナルは、ミトコンドリアの形態と生物エネルギー代謝にも重要であり、分泌は高エネルギー消費過程である。"