Core Concepts
本研究では、物理情報ニューラルネットワークを用いて、非線形大変形を示す生物組織の複雑な弾性係数分布を正確に推定することができる。
Abstract
本研究の目的は、物理情報ニューラルネットワーク(PINN)を用いて、非線形大変形を示す生物組織の複雑な弾性係数分布を特定することである。
まず、ガウシアンランダムフィールド、脳組織、三尖弁組織の3つの異なる組織構造パターンを対象とした。これらの組織は、実際の生物組織の複雑な構造を模擬したものである。有限要素解析を用いて、これらの組織に20%の二軸ストレッチを加えた際の歪み分布を参照データとして得た。
次に、4種類のPINN構造を検討した。その結果、境界条件を考慮せず、構成則を独立のネットワークで表現したアーキテクチャ(IIB)が最も優れた性能を示した。この構造では、3つの例題すべてにおいて、弾性係数分布の推定精度が5%以内に収まった。さらに、この構造は計算時間も最も短かった。
続いて、この最適なPINN構造を用いて、以下の検討を行った。
参照歪みデータにノイズを加えた場合でも、5%以内の推定精度を維持できることを示した。
二軸ストレッチ量を変化させた場合でも、5%以内の推定精度を維持できることを示した。
圧縮性ネオフックモデル、非圧縮性ムーニー・リブリンモデル、非圧縮性ゲントモデルなど、より複雑な構成則を持つ材料に対しても、5%以内の推定精度を維持できることを示した。
以上より、提案したPINN構造は、生物組織の複雑な微小力学特性を高精度に特定できることが明らかになった。この手法は、医用画像から組織の弾性特性を非侵襲的に推定する新しいアプローチとして期待できる。
Stats
歪み成分εxx、εyy、εxyの最大絶対誤差は、それぞれ0.01、0.08、0.12であった。
弾性係数Eの最大絶対誤差は0.02、0.12、0.14であった。