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コムギ食虫蛾の幼虫と成虫の味覚受容体が異なることを明らかにした研究


Core Concepts
コムギ食虫蛾の幼虫と成虫では、異なる味覚受容体を使って糖を検知することが明らかになった。幼虫はGr10受容体を使って低濃度の sucrose を検知し、成虫はGr6受容体を使って様々な糖を検知する。
Abstract
本研究は、コムギ食虫蛾の幼虫と成虫の味覚受容体の分子機構を明らかにしたものである。 まず、電気生理学的実験により、幼虫の maxillary galea の lateral sensilla styloconica には sucrose と fucose に高感度に反応する味覚受容ニューロンが存在するのに対し、成虫の触角、足、吻の味覚受容ニューロンは sucrose、fucose、fructose に低感度に反応することを示した。 次に、9つの候補味覚受容体遺伝子の発現解析を行い、幼虫の maxillary galea では Gr10が高発現しているのに対し、成虫の触角、足、吻では Gr6が高発現していることを明らかにした。 さらに、Xenopus oocyte発現系を用いた機能解析により、Gr10は sucrose に特異的に反応し、Gr6は sucrose、fucose、fructoseに反応することを示した。また、Gr10とGr6を共発現させると、sucrose とfucoseに対する反応が観察された。 最後に、CRISPR/Cas9を用いて Gr10 および Gr6 ノックアウト個体を作出し、電気生理学的および行動学的解析を行った。その結果、幼虫の Gr10 ノックアウトでは sucrose 検知能力が低下し、成虫の Gr6 ノックアウトでは sucrose、fucose、fructose 検知能力が低下することが明らかになった。 以上の結果から、コムギ食虫蛾の幼虫と成虫では、異なる味覚受容体を使って食餌に適した糖を検知していることが示された。これは、植食性昆虫の食性適応の分子機構を理解する上で重要な知見である。
Stats
幼虫の lateral sensilla styloconica の反応閾値は sucrose が 0.1 mM、fucose が 10 mM であった。 成虫の触角、足、吻の反応閾値は sucrose が 10 mM、100 mM、10 mM、fucose が 10 mM、10 mM、100 mM、fructose が 100 mM、100 mM、10 mM であった。
Quotes
「幼虫は主にGr10受容体を使って低濃度のsucrose を検知し、成虫はGr6受容体を使って様々な高濃度の糖を検知する」

Deeper Inquiries

植食性昆虫の幼虫と成虫の食性の違いを進化的にどのように理解できるか?

植食性昆虫の幼虫と成虫の食性の違いは、進化的な適応によるものと考えられます。例えば、Helicoverpa armigeraの場合、幼虫は主に若い葉、花芽、果実などの植物部位を摂食し、成虫は主に花の蜜を摂取します。これにより、幼虫と成虫は異なる糖分の種類と濃度を摂取する必要があります。この違いは、植物の部位や成熟度によって糖分濃度が異なるため、それぞれの生活段階に適した糖分受容システムが進化した結果と考えられます。幼虫は低濃度の糖分を検出するためにGr10を主に使用し、成虫は高濃度の糖分や他の糖類を検出するためにGr6を主に使用することで、それぞれの食性に適した糖分受容システムが確立されています。

Gr10とGr6以外の味覚受容体遺伝子がどのように機能しているのか、さらに詳しく調べる必要がある

Gr10とGr6以外の味覚受容体遺伝子がどのように機能しているのか、さらに詳しく調べる必要がある。本研究ではGr10とGr6が糖分受容に重要な役割を果たしていることが明らかになりましたが、他の糖分受容体遺伝子の機能や相互作用についてはまだ詳細が分かっていません。今後の研究では、Gr10とGr6以外の糖分受容体遺伝子の単独および複数のノックアウトラインを比較し、これらの受容体の下流効果を調査することが重要です。また、これらの受容体の機能や相互作用をより詳細に理解するために、さらなる実験や解析が必要とされています。

本研究の知見は、植食性昆虫の行動生態学的理解を深めるだけでなく、農業害虫の防除にも応用できる可能性がある

本研究の知見は、植食性昆虫の行動生態学的理解を深めるだけでなく、農業害虫の防除にも応用できる可能性があります。具体的には、研究によって特定された糖分受容体を標的とした新しい防除法の開発が考えられます。例えば、Gr10やGr6を標的とした化学物質や遺伝子編集技術を用いた防除手法の開発が検討される可能性があります。これにより、特定の糖分受容体を標的とした効果的な防除手段が開発され、農業害虫の被害を軽減することが期待されます。
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