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大腸菌の化学走性応答における細胞内pH変化の役割


Core Concepts
大腸菌は細胞内pHの変化を感知することで、カリウムイオンの濃度変化に対して化学走性応答を示す。Tar受容体とTsr受容体は細胞内pHの変化に対して異なる応答を示し、これが細胞の成長段階によってカリウムに対する応答の違いを生み出す。
Abstract
本研究では、大腸菌がカリウムイオンの濃度変化に対して化学走性応答を示すメカニズムを明らかにした。 まず、マイクロフルイディクスデバイスを用いて、カリウムイオンの濃度勾配に対する野生型大腸菌の走性応答を観察した。その結果、大腸菌は高濃度のカリウムイオン領域に集積することが分かった。 次に、個々の鞭毛モーターの応答を測定したところ、モーターのCW回転バイアスが変化するものの、プロトン駆動力は変化しないことが分かった。これは、カリウムイオンに対する応答が化学走性シグナル伝達経路を介していることを示唆している。 さらに、FRET法を用いて化学走性シグナルの応答を直接測定した。その結果、大腸菌はカリウムイオンに対して高感度かつ速やかな適応応答を示すことが明らかになった。また、Tar受容体とTsr受容体がカリウムイオンに対して異なる応答を示すことが分かった。これは、これら2つの主要な受容体が細胞内pHの変化に対して異なる応答を示すためであると考えられる。 以上の結果から、大腸菌はカリウムイオンの濃度変化を細胞内pHの変化として感知し、化学走性応答を示すことが明らかになった。この機構は、バイオフィルムによって生成されるカリウムイオンの時間的・空間的な変動に対する大腸菌の走性応答を説明することができる。
Stats
野生型大腸菌の化学走性移動係数(CMC)は時間とともに増加し、定常状態では指数関数的な細胞密度分布を示す。 30 mM KClを添加すると、野生型大腸菌のモーターCWバイアスが減少し、その後過適応を示す。一方、モーター回転速度は変化しない。 化学走性欠損株では、30 mM KClに対してモーターの応答がみられない。 野生型大腸菌の化学走性シグナルの応答は、100 μM MeAspに対する応答の1.06±0.10倍である。一方、60 mM sucrose に対する応答は-0.30±0.05倍である。 化学走性シグナルのカリウムに対する用量反応曲線のヒル係数は0.88±0.14、半飽和濃度は0.33±0.06 mMである。 Tar受容体のみを発現する株は、カリウム添加に対して二相性の応答を示す。一方、Tsr受容体のみを発現する株は、カリウムに対して引き寄せ応答を示す。
Quotes
"細胞内pHの増加に対してTar受容体とTsr受容体は異なる応答を示す。" "カリウムイオンに対する高感度な応答と速やかな適応応答により、細菌はわずかなカリウム濃度変化を感知し、局在化することができる。" "細胞の成長段階によってTar/Tsr受容体の比率が変化するため、カリウムに対する応答も変化し、細胞の要求も異なる可能性がある。"

Key Insights Distilled From

by Zhang,C., Zh... at www.biorxiv.org 08-31-2023

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.08.29.555418v3
Potassium-mediated bacterial chemotactic response

Deeper Inquiries

バイオフィルムが生成するカリウムイオンの時間的・空間的変動に対する、他の細菌種の走性応答はどのように異なるか?

バイオフィルムが生成するカリウムイオンの時間的・空間的変動に対する他の細菌種の走性応答は、細菌の種類によって異なります。先行研究では、バイオフィルムが生成するカリウムイオンは、周囲の細菌の行動に影響を与え、遠くの自由な細菌を引き寄せることが示されています。このようなカリウムイオンに対する細菌の走性応答は、細菌の種類やその持つ受容体の種類によって異なる可能性があります。例えば、Tar受容体とTsr受容体は、カリウムイオンに異なる反応を示すことが示されています。そのため、他の細菌種は、バイオフィルムが生成するカリウムイオンの変動に対して異なる走性応答を示す可能性があります。
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