Core Concepts
アブラムシは小麦植物への適応を促進するために、時間帯によって異なる唾液エフェクターを発現する。
Abstract
本研究では、重要な農業害虫であるムギアブラムシ(Rhopalosiphum padi)の日周リズムについて調べた。アブラムシの摂食行動、遺伝子発現、代謝プロセスに日周リズムが存在することが明らかになった。
アブラムシの摂食行動を電気的浸入グラフ(EPG)法で解析したところ、特に夜間の長時間の植物への唾液注入(E1フェーズ)に日周リズムが見られた。一方、植物汁液の摂取(E2フェーズ)には日周リズムは認められなかった。しかし、夜間の蜜露排出量が多いという日周リズムが観察された。
時系列の転写体解析により、4,460の日周リズム性遺伝子が同定された。これらは代謝経路に関連する4つのクラスターに分類された。特に注目されたのは、43%の日周リズム性唾液エフェクター遺伝子が夜間にピークを示したことである。これは、EPGで観察された夜間の唾液注入の増加と一致していた。
2つの主要な唾液エフェクター遺伝子(C002とE8696)の発現抑制実験では、小麦植物上でのアブラムシの生存率と繁殖力が低下したが、人工飼料上では影響がなかった。これは、これらの唾液エフェクターが植物との相互作用において重要な役割を果たすことを示唆している。
以上の結果から、アブラムシの摂食行動と性能は、唾液エフェクターの日周リズム的発現によって強く影響を受けることが明らかになった。この知見は、アブラムシの生物学的リズムを標的とした新しい害虫管理戦略の開発につながる可能性がある。
Stats
夜間のアブラムシの蜜露排出量は、昼間の1.4倍から1.7倍多かった。
アクアポリン1(AQP1)とグット・スクラーゼ1(SUC1)の発現抑制により、小麦植物上でのアブラムシの生存率が29%と79%低下した。
C002とE8696の発現抑制により、小麦植物上でのアブラムシの繁殖力が56%と86%低下した。
Quotes
"アブラムシは小麦植物への適応を促進するために、時間帯によって異なる唾液エフェクターを発現する。"
"アブラムシの摂食行動と性能は、唾液エフェクターの日周リズム的発現によって強く影響を受ける。"
"この知見は、アブラムシの生物学的リズムを標的とした新しい害虫管理戦略の開発につながる可能性がある。"