成体オスのショウジョウバエ Drosophila melanogaster において精嚢は幼若ホルモン応答性の組織である

Core Concepts

ショウジョウバエ成体オスの精嚢上皮細胞は幼若ホルモンに応答し、その応答にはMethoprene-tolerantとGerm cell-expressedが必要である。また、精嚢上皮細胞ではLactate dehydrogenaseが幼若ホルモン応答性遺伝子として発現する。

Abstract

本研究では、ショウジョウバエ成体オスにおいて精嚢が幼若ホルモン応答性の組織であることを明らかにした。 精嚢は多くの昆虫の雄性生殖器官の一部であり、精子の貯蔵や精液の産生に関与している。しかし、精嚢の機能や幼若ホルモンによる調節機構は十分に理解されていない。 本研究では、幼若ホルモン応答性レポーターであるJHRE-GFPを用いて、精嚢上皮細胞が幼若ホルモンに高感受性であることを示した。JHRE-GFPシグナルは、幼若ホルモンアナログの投与により上昇し、幼若ホルモン受容体であるMethoprene-tolerantとGerm cell-expressedをノックダウンすると抑制された。また、交尾後にJHRE-GFPシグナルが上昇することから、交尾によって雄成体の幼若ホルモン濃度が上昇することが示唆された。 さらに、精嚢上皮細胞でLactate dehydrogenase (Ldh)が幼若ホルモン応答性遺伝子として発現していることを明らかにした。Ldhはグリコーシスの中心酵素であり、精子貯蔵や精液産生における代謝調節に関与している可能性がある。 本研究は、ショウジョウバエ雄成体における新たな幼若ホルモン応答組織として精嚢を同定し、その分子メカニズムの一端を明らかにした。今後、精嚢の幼若ホルモン依存的な機能解明が期待される。

Stats

成体オスのJHRE-GFPシグナルは幼若ホルモンアナログの投与により上昇した。 JHRE-GFPシグナルはMethoprene-tolerantとGerm cell-expressedをノックダウンすると抑制された。 交尾後のオスでJHRE-GFPシグナルが上昇した。 精嚢上皮細胞でLactate dehydrogenaseの発現が幼若ホルモン依存的に上昇した。

Quotes

「精嚢上皮細胞は幼若ホルモンに高感受性である」 「Lactate dehydrogenaseは精嚢上皮細胞における幼若ホルモン応答性遺伝子である」

Key Insights Distilled From

The seminal vesicle is a juvenile hormone-responsive tissue in adult male Drosophila melanogaster

by Kurogi,Y., M... at www.biorxiv.org 03-23-2024

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.03.20.585833v1

Deeper Inquiries

幼若ホルモン応答性と精嚢の生殖機能の関係はどのように理解できるか?

この研究によれば、成虫のDrosophila melanogasterの精嚢は幼若ホルモンに応答する組織であることが示されています。精嚢は昆虫の多くの種に存在し、精子を貯蔵し、養い、維持する役割を果たしています。また、一部の昆虫では精嚢が精液タンパク質の産生を支援する分泌器官として機能することも知られています。幼若ホルモンは交尾行動や記憶に関与することが報告されており、精嚢への幼若ホルモンの作用は交尾や繁殖にも影響を与える可能性があります。また、以前の研究によると、Drosophila melanogasterのメスでは交尾後に幼若ホルモン濃度が上昇することが報告されており、このような交尾による幼若ホルモンの増加は精嚢の機能にも影響を与える可能性があります。

幼若ホルモン以外の因子が精嚢の機能調節に関与している可能性はないか?

幼若ホルモン以外の因子が精嚢の機能に影響を与える可能性も考えられます。例えば、精嚢は時計遺伝子を発現しており、時計遺伝子と幼若ホルモンが協力して精嚢の遺伝子発現を調節する可能性があります。また、精嚢は多くのタンパク質を貯蔵する役割も持っており、その機能は幼若ホルモン以外の代謝経路や栄養要因にも影響を受ける可能性があります。さらに、精嚢の機能は神経活動や代謝状態にも影響を受けるため、これらの要因が精嚢の機能調節に関与している可能性も考えられます。

精嚢の代謝調節と雄の生殖能力の関係について、どのような仮説が考えられるか?

精嚢の代謝調節と雄の生殖能力の関係については、以下のような仮説が考えられます。まず、精嚢における代謝活動が精子の品質や数量に影響を与える可能性があります。幼若ホルモンによるLdhの発現増加は、代謝活動の変化を示唆しており、これが精子や精嚢細胞間の代謝シャトルに関与することが考えられます。また、精嚢の代謝活動が精子の栄養供給や維持に重要であるため、幼若ホルモンによる代謝調節は雄の生殖能力にも影響を与える可能性があります。さらに、精嚢の代謝活動は神経細胞との間での栄養供給を調節するラクテートシャトルに関与している可能性があり、このプロセスが雄の生殖能力にも重要な役割を果たしていると考えられます。