Core Concepts
パッチクランプ法の手動操作の煩雑さと時間のかかる問題を解決するため、複数のパッチクランプ電極を協調的に制御する新しい手法「パッチウォーキング」を開発し、その有効性を実証した。
Abstract
本研究では、神経細胞間のシナプス接続を効率的に探索するために、新しい手法「パッチウォーキング」を開発した。従来のパッチクランプ法では、各電極を個別に操作し、細胞を順番に記録していく必要があり、非常に手間と時間がかかる。一方、パッチウォーキング法では、複数の電極を協調的に制御することで、1回の記録試行で多数の細胞間接続を探索できる。
具体的には、2つのパッチクランプ電極を用いて実験を行った。まず、脳スライス標本から8-10個の健康な細胞を選択し、それぞれの細胞位置を記録した。次に、2つの電極のうち1つを選んで最も近い細胞に接近させ、パッチクランプ記録を行う。記録が成功したら、その電極を引き上げて洗浄し、次の細胞に移動する。一方、もう1つの電極は引き続き前の細胞に接続したままとする。このように、1つの電極を移動させながら次々と新しい細胞を記録していく「パッチウォーキング」を行うことで、効率的に多数の細胞間接続を探索できる。
実験の結果、136回の記録試行で71個の成功記録を得た。そのうち29ペアの細胞間接続を探索し、3つの接続を検出した。従来法と比べて、パッチウォーキング法では80-92%多くの細胞間接続を探索できることが示された。この手法は、神経回路の構造と機能を解明する上で有用な技術となると期待される。
Stats
2つのパッチクランプ電極を用いた実験で、136回の記録試行を行い、71個の成功記録を得た。
29ペアの細胞間接続を探索し、3つの接続を検出した。
細胞間の平均距離は91.6 ± 0.2 μmであった。
Quotes
「パッチウォーキング」により、従来法と比べて80-92%多くの細胞間接続を探索できることが示された。
「パッチウォーキング」は、神経回路の構造と機能を解明する上で有用な技術となると期待される。