Core Concepts
ラットは長期の恐怖条件づけ中に、これまで知られていなかった高周波の長い単調な44 kHz超音波発声を発する。これらの発声は、ラットの広範な発声レパートリーの一部を成し、ストレスや不安などの負の情動状態を伝達する可能性がある。
Abstract
本研究では、ラットが長期の恐怖条件づけ中に、これまで知られていなかった新しい種類の超音波発声を発することを示した。これらの発声は、従来の22 kHz発声よりも高い周波数帯域(35-50 kHz)にあり、長く単調な特徴を持つ。
実験では、ウィスター系ラットとSHRラットを用いて、10回の恐怖条件づけを行った。その結果、ラットの53匹中32匹が44 kHz発声を示した。これらの発声は、条件づけの後半(5-10回目の試行)で増加し、22 kHz発声を部分的に置き換えるようになった。44 kHz発声は、凍結行動と関連しており、22 kHz発声よりも高い割合で観察された。
さらに、44 kHz発声は22 kHz発声と密接に関連しており、両者は長い単調な嫌悪的発声の一つのスーパータイプを成すことが示唆された。発声の周波数比は約1.5倍(22 kHz vs. 44 kHz)であり、この比は音楽理論でも知られる完全5度の関係に相当する。
二つの独立した手法によるクラスタリング分析からも、44 kHz発声は22 kHz発声や50 kHz発声とは明確に区別される独立した発声タイプであることが確認された。
発声のPlayback実験の結果、44 kHz発声は22 kHz発声と類似した生理的・行動的反応を引き起こすことが示された。一方で、50 kHz発声に対する反応とは中間的な性質を示した。これらの結果は、ラットが44 kHz発声を通して、より強い負の情動状態を伝達している可能性を示唆している。
今後、44 kHz発声の機能や意義について、さらなる研究が必要とされる。しかし本研究は、ラットの発声レパートリーにこれまで知られていなかった新しい発声タイプが存在することを明らかにした点で重要な意義を持つ。
Stats
ウィスター系ラットの10回の恐怖条件づけ実験において、44 kHz発声は全発声の7.5%を占めた。
ラットの89.1%が22 kHz発声を、69.6%が44 kHz発声を示した。
44 kHz発声は、条件づけの後半(5-10回目の試行)で最も多く観察された(最大19.4%)。
Quotes
「ラットは、これまで知られていなかった新しい種類の長く単調な高周波の嫌悪的発声を示す」
「44 kHz発声は、22 kHz発声と密接に関連しており、両者は長い単調な嫌悪的発声の一つのスーパータイプを成す」
「44 kHz発声は、ラットの広範な発声レパートリーの一部を成し、ストレスや不安などの負の情動状態を伝達する可能性がある」