Core Concepts
負の記憶の繰り返しの活性化は、マウスにおいて持続的な細胞および行動の異常を引き起こす。
Abstract
本研究では、負の記憶を担う神経細胞集団(ネガティブエングラム)の慢性的な活性化が、マウスの行動と細胞レベルの変化を引き起こすかどうかを調べた。
まず、ポジティブとネガティブの記憶を担う神経細胞集団の遺伝子発現を解析したところ、ネガティブエングラムでは炎症関連遺伝子の発現が高まっていた。
次に、ネガティブエングラムを3ヶ月間にわたって人工的に活性化したところ、若齢(6ヶ月齢)および高齢(14ヶ月齢)のマウスで以下のような行動変化が観察された:
不安関連行動の増加
空間作業記憶の低下
恐怖記憶の消去の障害
恐怖の般化の増大
さらに、免疫組織化学的な解析から、海馬においてミクログリアやアストロサイトの形態変化、GABA蛍光の減少といった細胞レベルの変化も確認された。
以上の結果から、負の記憶の繰り返しの活性化は、マウスにおいて持続的な細胞および行動の異常を引き起こすことが示された。この知見は、ヒトにおける反すう行動の悪影響を理解する上で重要な示唆を与えるものと考えられる。
Stats
6ヶ月齢のhM3Dq群は、オープンフィールドテストにおいて、mCherry群と比べて中央部分の滞在時間が有意に減少していた。
14ヶ月齢のhM3Dq群は、Y迷路テストにおいて、mCherry群と比べて自発的交替率が有意に低下していた。
6ヶ月齢のhM3Dq群は、恐怖記憶の消去試験において、mCherry群と比べて凍結反応の減少が有意に抑制される傾向にあった。
6ヶ月齢および14ヶ月齢のhM3Dq群は、新規文脈(コンテキストB)への暴露時に、mCherry群と比べて有意に高い凍結反応を示した。
Quotes
"負の記憶の繰り返しの活性化は、マウスにおいて持続的な細胞および行動の異常を引き起こす。"
"ネガティブエングラムでは炎症関連遺伝子の発現が高まっていた。"
"海馬においてミクログリアやアストロサイトの形態変化、GABA蛍光の減少といった細胞レベルの変化も確認された。"