Core Concepts
老化細胞が放出する脂質SASP因子15d-PGJ2が、HRasタンパク質の修飾を介して筋肉分化を阻害する。
Abstract
本研究では、化学療法薬ドキソルビシンによって誘導される老化細胞が、プロスタグランジンD2の最終代謝産物である15d-PGJ2を合成・放出し、それが筋芽細胞のHRasタンパク質を修飾・活性化することで筋肉分化を阻害することを明らかにした。
具体的には以下の通り:
ドキソルビシン投与によりマウス骨格筋および培養C2C12筋芽細胞で細胞老化が誘導された。
老化C2C12細胞は15d-PGJ2を大量に合成・放出した。
15d-PGJ2は筋芽細胞のHRasタンパク質のシステイン184を修飾し、HRasを活性化した。
HRasのシステイン184変異体では15d-PGJ2による筋分化阻害が部分的に回復した。
15d-PGJ2はHRasの細胞内局在を変化させ、MAPK経路を活性化したが、Akt経路は活性化しなかった。
以上より、老化細胞が放出する15d-PGJ2がHRasを修飾・活性化することで筋分化を阻害し、化学療法後の筋肉再生を抑制することが示された。
Stats
ドキソルビシン投与によりマウス骨格筋で p21 と γH2A.X の発現が増加した。
ドキソルビシン処理によりC2C12細胞で p21、IL6、TGFβ の mRNA 発現が増加した。
老化C2C12細胞では15d-PGJ2の濃度が正常細胞の約100倍に上昇した。
15d-PGJ2処理によりC2C12細胞の増殖が抑制された。
15d-PGJ2処理によりC2C12細胞およびヒト初代筋芽細胞の分化マーカー発現が低下した。
Quotes
「老化細胞が放出する15d-PGJ2がHRasを修飾・活性化することで筋分化を阻害し、化学療法後の筋肉再生を抑制する」