Core Concepts
多繊毛細胞では、数百もの運動繊毛を形成するために、中心粒を大量に増幅する必要がある。この過程では、細胞周期と中心粒複製のプログラムが巧みに利用されるが、増幅された中心粒がどのように組織化されて最終的な繊毛パターンを形成するかは明らかではなかった。本研究では、微小管ネットワークが中心粒増幅を時空間的に調整することを明らかにした。
Abstract
本研究では、多繊毛細胞(MCC)における中心粒増幅の初期過程を解明するため、新しい細胞モデルと高解像度イメージング技術を用いて分析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。
中心粒増幅は、既存の中心体を中心とした周辺領域で始まる。微小管ネットワークが、中心粒構成要素からなる「巣」を形成し、そこから新しい中心粒が順次生み出される。
増幅が進むと、新生中心粒は微小管を核化する能力を獲得し、核膜周囲に移動・集積する。その後、微小管の助けを借りて、集合的に頂端部へ移動する。
増幅終了後の「離脱」段階では、微小管が中心粒の核膜からの離脱と、個々の中心粒の分離を促進する。
微小管の阻害により、中心粒増幅の初期過程が乱れ、中心粒が分散してしまう。また、増幅された中心粒の離脱も効率的に進行しなくなる。
以上の結果から、微小管ネットワークが、中心粒増幅の時間的・空間的な調整を担っていることが明らかになった。この知見は、多繊毛細胞分化における中心粒動態の理解を深めるとともに、中心粒増幅異常に関連する疾患の病態解明にも寄与すると考えられる。
Stats
中心粒増幅初期の新生中心粒は、微小管壁を持たない。
増幅が進むと、新生中心粒は徐々に微小管を獲得し、長さと幅が増大する。
微小管阻害により、中心粒の離脱が不完全になる細胞が増加する。
Quotes
「微小管ネットワークが、中心粒増幅を時空間的に調整する」
「増幅された中心粒が、微小管の助けを借りて集合的に頂端部へ移動する」
「微小管阻害により、中心粒の離脱が効率的に進行しなくなる」