Core Concepts
A. baumannii の細胞表層多糖は、自身の VI 型分泌システムの活性を抑制することで、細菌間競争において防御的な役割を果たす。
Abstract
本研究では、A. baumannii の細胞表層多糖(CPS)が VI 型分泌システム(T6SS)の抗菌機能にどのように影響するかを調べた。
主な知見は以下の通り:
CPSは、他の細菌からのT6SS攻撃に対する防御機能を果たす。一方で、多くのA. baumannii株は自身のT6SSを持っているが、CPSの存在によってその活性が抑制される。
CPS過剰生産変異株では、T6SS活性が著しく低下する。これは、CPSの組織化の乱れによりT6SS分泌が阻害されるためと考えられる。
T6SS分泌が抑制された株では、Hcp (T6SS内管構造タンパク質)の蓄積が見られ、これがClpXPプロテアーゼ系による分解を引き起こすことが明らかになった。
以上より、A. baumanniiにおいてCPSはT6SSの活性を調節する重要な因子であり、細菌間競争における適応戦略に関与していることが示された。
Stats
CPSを持たない株(ΔitrA)は、CPSを持つ株(WT)に比べて補体による殺菌に対して3桁の感受性上昇を示した。
CPSを持たない株(ΔitrA)は、他細菌のT6SS攻撃に対して高感受性を示したが、CPSを人工的に発現させると抵抗性が回復した。
CPSを過剰生産する変異株(ΔbfmS)では、T6SS活性が著しく低下した。一方、CPSを持たない二重変異株(ΔbfmSΔitrA)ではT6SS活性が回復した。
CPSを過剰生産する変異株(ΔbfmS)や抗生物質処理によってCPSが増加した株では、Hcpタンパク質の蓄積が見られ、ClpXPプロテアーゼによる分解が引き起こされた。
Quotes
"CPSは、他の細菌からのT6SS攻撃に対する防御機能を果たす。一方で、多くのA. baumannii株は自身のT6SSを持っているが、CPSの存在によってその活性が抑制される。"
"CPS過剰生産変異株では、T6SS活性が著しく低下する。これは、CPSの組織化の乱れによりT6SS分泌が阻害されるためと考えられる。"
"T6SS分泌が抑制された株では、Hcp (T6SS内管構造タンパク質)の蓄積が見られ、これがClpXPプロテアーゼ系による分解を引き起こすことが明らかになった。"