Core Concepts
膜タンパク質の分泌経路における動態は、膜ドメインへの選択的な分配によって調節される。
Abstract
本研究では、膜タンパク質の分泌経路における膜ドメインの役割を明らかにしている。
まず、小胞体からの膜タンパク質の輸送速度は、細胞質ドメインの短いペプチドモチーフによって主に決まり、膜ドメインの親和性の影響は小さいことが示された。一方、ゴルジ体からの輸送速度は、膜ドメインの親和性に大きく依存することが明らかになった。
ラフト親和性の高い膜タンパク質はゴルジ体から2.5倍ほど速く輸送されることが分かった。この観察結果を説明するため、膜ドメインへの分配を組み込んだ動態モデルを構築した。このモデルは実験結果を良く再現し、ゴルジ体膜内に共存する膜ドメインの存在を予測した。
実際に、ラフト親和性の高い膜タンパク質とラフト排除型膜タンパク質が、ゴルジ体内で空間的に分離することが顕微鏡観察により確認された。さらに、ラフト脂質合成を阻害すると、ラフト親和性膜タンパク質のゴルジ体からの輸送が遅延することも示された。
以上の結果から、膜ドメインは膜タンパク質の分泌経路における選別と輸送に重要な役割を果たすことが明らかになった。
Stats
ラフト親和性の高いLAT-TMDはゴルジ体から2.5倍速く輸送される
ラフト排除型allL-TMDはゴルジ体からの輸送が遅い
ラフト脂質合成阻害によりLAT-TMDのゴルジ体からの輸送が遅延する
Quotes
"ラフト親和性は一部の膜タンパク質の定常状態での局在化には十分であるが、小胞体からの迅速な輸送には不十分である。"
"一方、ゴルジ体からの輸送速度は、ラフト親和性に強く依存する。"
"これらの観察は、ラフト様膜ドメインが分泌経路に関与していることを支持する。"