Core Concepts
リクスワーテルスタート(RWS)は、道路トンネル制御システムの標準化と供給業者との円滑なコミュニケーションを目的として、形式的モデル化に取り組んでいる。SysMLを用いたモデル化では、手動での翻訳では時間がかかり誤りが生じやすいため、自動翻訳手法を検討した。しかし、自動翻訳では状態空間の爆発的な増大が問題となった。そのため、Dezyneを用いた代替的なモデル化手法も検討したが、Dezyneの検証機能を十分に活用できないという課題が明らかになった。
Abstract
本論文では、リクスワーテルスタート(RWS)が道路トンネル制御システムの形式的モデル化に取り組む過程が報告されている。
まず、RWSはSysMLを用いてトンネル制御システムの機能を包括的にモデル化してきた。しかし、SysMLモデルを手動でmCRL2の形式仕様に翻訳するのは時間がかかり誤りが生じやすいため、自動翻訳手法の検討を行った。
自動翻訳では、SysMLモデルの「構造化された自然言語」部分をアクティビティ図で形式化し、XMIからmCRL2への変換を実装した。しかし、SysMLモデルのコミュニケーションスキームにより生成されるmCRL2モデルには膨大な数の遷移が含まれ、検証が困難になるという問題が明らかになった。
そのため、Dezyneを用いた代替的なモデル化手法も検討した。Dezyneは、コンポーネント間の明示的な通信を前提としており、プッシュ型とプル型の2つのモデリングスタイルを検討した。プル型では状態空間の爆発を抑えられるものの、Dezyneの検証機能を十分に活用できない。一方、プッシュ型ではDezyneの検証機能を活用できるが、大規模なシステムでは状態空間の爆発が問題となった。
結論として、SysMLベースの形式化手法では、グラフィカルな記述の煩雑さと状態空間の爆発が課題となり、Dezyneでも十分な検証が困難であることが明らかになった。本研究は、形式的手法を産業界の制約下で適用する際の課題を示唆するものである。