Core Concepts
Khdc3の変異は、その遺伝子型に関係なく、マウスの肝臓の代謝遺伝子発現を変化させ、その影響が複数世代にわたって持続する。この現象は、生殖細胞の小RNAの異常発現が原因と考えられる。
Abstract
本研究では、マウスのゲルム細胞遺伝子Khdc3の変異が、その遺伝子型に関係なく、肝臓の代謝遺伝子発現を変化させ、その影響が複数世代にわたって持続することを示した。
Khdc3欠損マウスの卵子では、脂質代謝や糖代謝に関連する遺伝子の発現異常が見られた。興味深いことに、Khdc3欠損マウスの野生型の子孫でも、同様の肝臓代謝遺伝子の発現異常が観察された。この発現異常は、少なくとも6世代にわたって持続し、Khdc3遺伝子型の再導入では回復しなかった。
さらに、Khdc3欠損マウスおよびその野生型の子孫の卵子では、複数のmiRNAやtRNA断片の発現異常が確認された。これらの小RNAの異常発現が、代謝表現型の世代間伝達の機序と考えられる。
マウスの交配実験から、この代謝表現型は、母系・父系両方の系譜から伝達されることが示された。この遺伝様式は、DNA配列の変異や DNA メチル化、ヒストン修飾などの in cis の遺伝メカニズムでは説明できず、むしろ、小RNAなどの体細胞因子を介した表現型の伝達が示唆される。
本研究は、遺伝子型に関係なく、先祖の遺伝的変異が後代の表現型に影響を及ぼす現象を明らかにした点で重要である。このような「遺伝的養育」の分子メカニズムの解明は、疾患リスクの理解や予防につながる可能性がある。
Stats
Khdc3欠損マウスの肝臓では、Cyp17a1遺伝子の発現が上昇していた。
Khdc3欠損マウスの野生型の子孫でも、Cyp17a1遺伝子の発現が上昇していた。
Khdc3欠損マウスの野生型の子孫では、肝臓の代謝関連遺伝子の発現異常が複数世代にわたって持続していた。
Khdc3欠損マウスの野生型の子孫では、血清中の複数の代謝物質の濃度異常が見られた。
Quotes
Khdc3欠損マウスの野生型の子孫では、肝臓の代謝関連遺伝子の発現異常が複数世代にわたって持続していた。
Khdc3欠損マウスの卵子では、複数のmiRNAやtRNA断片の発現異常が確認された。