単一細胞解像度における マウス嗅上皮の分子、細胞、発生学的組織化

Concetti Chiave

嗅上皮の単一細胞トランスクリプトーム解析により、新規の感覚神経細胞集団の発見、受容体発現の複雑性、受容体選択に関わる転写制御機構の解明を行った。

Sintesi

本研究では、juvenile (P14)およびadult (P56)マウスの嗅上皮の単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。

細胞クラスター解析により、以下の知見を得た:

1. 既知の細胞タイプに加え、新規の感覚神経細胞集団を発見した。これらの細胞は嗅覚受容体と嗅上皮マーカーを共発現しており、「分泌型嗅覚感覚神経」と命名した。

2. 嗅覚受容体(V1R、V2R、OR)の発現は幅広い分布を示し、個々の受容体の発現レベルは細胞間で大きく異なることが明らかになった。

3. 単一細胞レベルで、V1R、V2R、ORの複数の受容体が同一細胞で共発現することが見出された。特に、同一染色体上の受容体や機能的に関連する受容体の共発現が多く観察された。

4. V1R系譜とV2R系譜の分化過程では、特定の転写因子の発現パターンの違いが明らかになった。V1R系譜では、Meis2の発現が受容体選択に関与するのに対し、V2R系譜では複数の転写因子の組み合わせが関与することが示唆された。

5. 個々の受容体タイプに特異的に発現する軸索ガイダンス分子を同定した。これらの分子が嗅上皮-嗅球間の神経回路形成に寄与すると考えられる。

以上の結果から、嗅上皮の細胞系譜と受容体発現の制御機構、および神経回路形成の分子基盤が明らかになった。

Statistiche

V1R、V2R、ORの発現レベルは細胞間で大きく異なる
多くの受容体遺伝子は10細胞未満でしか発現していない
Vmn1r89、Vmn1r184は高発現かつ多くの細胞で発現している
Vmn2r53、Vmn2r115は高発現かつ多くの細胞で発現している
受容体遺伝子の多くは同一染色体上に位置する受容体と共発現している

Citazioni

"我々は、発達段階と成体の両方のマウス嗅上皮の単一細胞トランスクリプトームアトラスを作成した。"
"我々は、これまでに同定されていなかった新規の細胞集団を発見した。これらの細胞は嗅覚受容体を発現しており、かつ正規の嗅覚感覚神経の特徴も示している。"
"受容体遺伝子の発現は累乗則に従うが、個々の受容体や細胞タイプ間で平均発現レベルに大きなばらつきがある。"

Approfondimenti chiave tratti da

Molecular, Cellular, and Developmental Organization of the Mouse Vomeronasal Organ at Single Cell Resolution

by Hills,M. H.,... alle www.biorxiv.org 02-24-2024

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.02.22.581574v1

Domande più approfondite

嗅上皮の「分泌型嗅覚感覚神経」はどのような機能を担っているのか?

研究によると、分泌型嗅覚感覚神経（sVSNs）は、VNO内で特定の受容体を発現する新しい神経細胞タイプであり、VSNsとは異なる特性を持っています。これらの細胞は、VNOの活性化に応じて特定のリガンドを検出し、それに応じて特定のタンパク質を分泌する可能性があります。具体的には、これらの細胞は、リガンドを検出した際に特定のリポカリンタンパク質やムチンを産生し、化学物質のクリアリングを促進する役割を果たす可能性があります。このような機能は、神経上皮の完全性を保護するために重要であると考えられます。

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V2R受容体の発現制御に関わる転写因子の組み合わせは、V2R VSNsの特定の受容体タイプを指定するために重要です。研究によると、V2R受容体の発現は、複数の転写因子によって決定されます。例えば、Tfap2eはV2R運命の維持に関与し、Pou2f1やAtf5などの他の転写因子も特定のV2R受容体を指定するために重要です。V2R受容体の発現は、複数の転写因子の組み合わせによって制御される可能性があり、それぞれの受容体タイプに固有の組み合わせが存在します。

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受容体発現と軸索ガイダンス分子の関係は、VSNsの軸索投射パターンや他の神経細胞との接続に重要な影響を与えています。特定の受容体タイプが特定の軸索ガイダンス分子を発現することで、VSNsの軸索が特定の方向に導かれ、特定の神経回路形成が促進されます。例えば、Robo2はV2R VSNsを腹側嗅球に導く役割を果たし、Kirrel2はV1R VSNsを特定の方向に導くことが示されています。このような軸索ガイダンス分子の存在により、VSNsは特定の嗅球領域に適切に投射され、特定の受容体タイプとの適切な接続が形成されることが可能となります。