核心概念
本論文は、宮岡等式を満たす極小射影多様体の構造を明らかにし、その多様体に対するアバンダンス予想を解決することを目的とする。
要約
宮岡等式を満たす極小射影多様体の構造定理:論文要約
本論文は、高次元代数幾何学において重要な未解決問題であるアバンダンス予想に取り組むものである。特に、宮岡等式を満たす極小射影多様体の構造を解明し、その多様体に対してアバンダンス予想を解決することを目的とする。
アバンダンス予想は、極小多様体、すなわち標準因子 (K_X) がnefである多様体 (X) に対して、(K_X) がsemi-ampleであることを主張する。
宮岡不等式は、滑らかな極小射影多様体 (X) に対して、(3c_2(Ω^1_X ) − c_1(Ω^1_X )^2 ≥ 0) が成り立つことを主張する。
宮岡等式を満たす多様体の構造については、先行研究により、滑らかな場合や低次元の場合に部分的な結果が得られている。
本論文では、まず、極小射影多様体 (X) に対して宮岡不等式が成り立つことを証明する。さらに、宮岡等式を満たす極小klt多様体 (X) に対して、(K_X) がsemi-ampleであり、その数値的次元 (ν(K_X)) が 0, 1, 2 のいずれかであることを証明する。さらに、(ν(K_X)) の値に応じて、(X) の構造を具体的に記述する。
(ν(K_X) = 0) の場合: (X) は、有限準étale被覆をとると、アーベル多様体となる。
(ν(K_X) = 1) の場合: (X) は、有限準étale被覆をとると、一般型の曲線上のアーベル群スキームとなる。
(ν(K_X) = 2) の場合: (X) は、有限準étale被覆をとると、アーベル多様体と、普遍被覆が開球となる滑らかな曲面の積となる。