核心概念
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測により、赤方偏移3 < z < 4.5にある6つの銀河の中心部に、巨大な星形成の塊が合体して形成された可能性のある、古くて密度の高い星団核が存在することが明らかになった。
参考文献: Ji, Z., Williams, C. C., Tacchella, S. et al. "JADES + JEMS: A Detailed Look at the Buildup of Central Stellar Cores and Suppression of Star Formation in Galaxies at Redshifts 3 < z < 4.5". arXiv e-prints, arXiv:2305.18518v2 (2024).
研究目的: 本研究では、高赤方偏移銀河における中心部の星形成抑制と中心核の形成メカニズムを、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた観測データから解明することを目的としています。
方法: JADESおよびJEMSサーベイから得られたJWST/NIRCamの14フィルター画像を用いて、赤方偏移3 < z < 4.5にある6つの銀河の空間的に分解された星団の性質を調べました。これらの銀河は、HSTからJWSTまでの23フィルターの測光データを用いて、Prospectorを用いたSEDフィッティングにより、個々の構造成分の星団の性質を測定しました。
主な結果:
観測対象の6つの銀河の中心部には、古く(0.4〜0.7Gyr)、質量が大きく、密度の高い星団核が存在することが明らかになりました。
これらの星団核の質量は、トゥーム質量の2倍以上であることから、単一の現場での断片化ではなく、巨大な星形成の塊の合体によって形成された可能性が示唆されます。
星団核の星齢は、力学的摩擦による塊の内側への移動の時間スケールと類似しており、巨大な星形成の塊の合体によって形成されたという説を支持しています。
6つの銀河は、まだクエンチングはされていませんが、星形成主系列を0.2〜0.7 dex下回っています。
各銀河内では、中心部の星団核の方が比星形成率が低く、星団核の星質量面密度は、同じ質量と赤方偏移のクエンチング銀河とすでに類似しています。
一方、星団核の星齢は、銀河の外側の滑らかな部分の星齢と同程度か、あるいは若いことがわかりました。
結論:
これらの発見は、高赤方偏移銀河の中心部の形成に関するガスリッチコンパクト化シナリオのモデル予測と一致しています。
本研究では、銀河全体のクエンチングが始まると同時に、高密度の中心核が同時に形成されている様子を観測している可能性があります。
意義: 本研究は、JWSTを用いることで、高赤方偏移銀河における星団核の形成とクエンチングのプロセスをこれまでにない詳細さで明らかにできることを示しました。これは、銀河の構造的進化とクエンチングの物理メカニズムを理解する上で重要な一歩となります。
今後の研究:
今回のサンプルは6個の銀河と限られているため、今後さらに多くの銀河を対象とした観測を行い、星団核の形成とクエンチングの関係を統計的に調べる必要があります。
また、銀河のガス運動や星間物質の性質を観測することで、星団核の形成とクエンチングを引き起こす物理プロセスをより詳細に解明する必要があります。
統計
観測対象の銀河は、赤方偏移3 < z < 4.5に位置し、星質量は約10^10太陽質量です。
これらの銀河の中心部の星団核は、星齢が0.4〜0.7Gyrと古く、質量はトゥーム質量の2倍以上です。
銀河全体の星形成活動は、まだクエンチングはされていませんが、星形成主系列を0.2〜0.7 dex下回っています。