核心概念
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線観測により、超巨大星団ウェスタールンド1の、これまで観測が困難であった低質量星や星周円盤、星雲の詳細な構造が明らかになった。
文献情報: Guarcello, M. G., et al. (2024). EWOCS-III: JWST observations of the supermassive star cluster Westerlund 1. Astronomy & Astrophysics manuscript no. sample631.
研究目的: 超巨大星団ウェスタールンド1の低質量星、星周円盤、星雲の形成と進化をJWST観測によって解明する。
手法: JWST/NIRCamとJWST/MIRIを用いてウェスタールンド1とその対照領域を観測し、DOLPHOTを用いた測光、チャンドラX線観測データとの比較を行った。
主な結果:
NIRCamのカラー等級図から、褐色矮星質量領域までの星団の星列が明らかになった。
MIRIの画像からは、星団の中心部や大質量星の周囲に、複雑な構造を持つ星雲が観測された。
特に、複数の赤色超巨星を取り囲むダストシェルやアウトフローが詳細に捉えられ、星団の進化における大質量星のフィードバックの影響が示唆された。
結論:
JWSTの赤外線観測能力は、超巨大星団の低質量星や星周円盤、星雲の形成と進化、そして大質量星との相互作用を理解する上で非常に有効である。
ウェスタールンド1の星雲の起源は、星団の親星雲の名残、大質量星からの風、過去の超新星爆発の放出物のいずれか、あるいはこれらの組み合わせが考えられる。
意義: 本研究は、超巨大星団における星形成史、大質量星の進化、星間物質へのフィードバックに関する理解を深める上で重要な貢献をするものである。
限界と今後の研究:
星雲の起源を特定するためには、分光観測による組成や運動状態の分析が必要である。
星団の星形成史を詳細に解明するためには、星団全体の年齢、質量、金属量などをより正確に決定する必要がある。
統計
NIRCamのF115Wフィルターにおける50%の completeness は、約23.8等級に相当する。
これは、距離4230 pc、減光Av=10 magの場合、質量0.06太陽質量の褐色矮星に対応する。
星団には24個のウォルフ・ライエ星、複数の青色・黄色超巨星、4個の赤色超巨星、1個の輝線青色変光星が存在する。
星団には、100個以上のOB型超巨星も存在し、その多くはO9-B1型である。