カドミウムに関わらず、クモグモは集団で植物を回避する

核心概念

クモグモは個体では植物のカドミウム蓄積を回避しないが、集団では回避する。この回避行動は競争相手の有無や植物のカドミウム含有率に影響されない。

要約

本研究では、カドミウムを蓄積したトマト植物に対するクモグモの個体および集団レベルでの回避行動を調べた。
個体レベルでは、クモグモの雌成虫は、カドミウムの有無にかかわらず葉片を選択しなかった。しかし、カドミウムを含む葉片では産卵数が有意に減少した。
一方、集団レベルでは、クモグモは一貫してカドミウム含有植物を回避した。この回避行動は、カドミウム含有植物の割合が変化しても、また競争相手の有無にも影響されなかった。
つまり、クモグモは個体では植物のカドミウム蓄積を認識できないが、集団では何らかの手がかりを使ってカドミウム含有植物を回避することが示された。この集団レベルでの回避行動は、金属蓄積植物に対する植食者の分布と相互作用に重要な影響を及ぼすと考えられる。

統計

カドミウム含有植物では、クモグモの1雌当たりの産卵数が有意に減少した。
競争相手のいない環境では、カドミウム含有植物と無カドミウム植物の間でクモグモの1雌当たりの雌成虫数に有意差があった。しかし、カドミウム含有環境では、この差は見られなかった。

引用

「クモグモは個体では植物のカドミウム蓄積を回避しないが、集団では回避する」
「この集団レベルでの回避行動は、金属蓄積植物に対する植食者の分布と相互作用に重要な影響を及ぼす」

抽出されたキーインサイト

Spider mites collectively avoid plants with cadmium irrespective of their frequency or the presence of competitors

by Godinho,D. P... 場所 www.biorxiv.org 08-18-2023

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.08.17.553707v5

深掘り質問

カドミウム蓄積植物に対するクモグモの集団回避行動の具体的なメカニズムは何か。

この研究から、クモグモは個体単位ではカドミウムを蓄積したトマトの葉を選好しないことが示されました。しかし、集団で選択する際には、カドミウムを蓄積した植物を回避する傾向が見られました。この集団回避行動の具体的なメカニズムは、クモグモがカドミウムを蓄積した植物から発せられる化学物質や揮発性物質を検出し、それを避けることによって実現されている可能性があります。クモグモは他の個体からの情報を利用して、カドミウムを蓄積した植物を回避することで集団としての生存戦略を確立していると考えられます。

クモグモ以外の植食者でも同様の集団回避行動が見られるか。

金属蓄積植物に対する集団回避行動は、クモグモだけでなく他の植食者にも見られる可能性があります。金属蓄積植物は一般的に多くの植食者にとって有害であり、そのため他の植食者も金属蓄積植物を回避する傾向があるかもしれません。選択のメカニズムや行動パターンは種によって異なる可能性がありますが、金属蓄積植物に対する集団回避行動は生態系全体で一般的な防衛戦略として見られることが考えられます。

金属蓄積植物と植食者の相互作用が生態系全体にどのような影響を及ぼすか。

金属蓄積植物と植食者の相互作用は生態系全体にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。金属蓄積植物は一部の植食者にとって有害であり、これにより金属蓄積植物はその周囲の植食者から避けられる傾向があります。この結果、金属蓄積植物は比較的少ない植食者の攻撃を受けることになります。一方で、金属蓄積植物の周囲では植食者同士の競争が激化する可能性があります。これにより、金属蓄積植物周辺の資源パッチではより強い競争が生じ、生態系内での選択圧が変化することが考えられます。金属蓄積植物と植食者の相互作用は、生態系の構造やダイナミクスに影響を与える重要な要素となる可能性があります。