核心概念
地球システムモデルの温度と降水量の同時エミュレーションを行い、両変数の相関関係を保持した現実的なサンプルを生成することができる。
要約
本研究では、地球システムモデル(ESM)の温度と降水量の変数を同時にエミュレーションするDiffESMモデルを提案した。従来のDiffESMモデルは単一の変数(温度または降水量)のみをエミュレーションしていたが、本拡張版では2つの変数を同時にモデル化することで、両者の相関関係を保持した現実的なサンプルを生成できるようになった。
具体的には以下の通り:
- 入力には月平均の温度と降水量のマップを使用し、出力は28日間の日別の温度と降水量のシーケンスとなる。
- 生成されたサンプルは、ESMから得られるサンプルと同様の統計的性質(干天日数、熱波など)を示す。
- 3つの地点(ハワイ、メルボルン、ノボシビルスク)における温度と降水量の関係を分析したところ、生成サンプルはESMのサンプルと同様の相関パターンを再現できていることが確認された。
本研究の成果は、極端気象イベントの分析など、複数の気候変数の相互作用を考慮する必要がある応用分野において有用であると考えられる。今後は、湿度などの追加変数の統合や、複数のESMに対応したモデルの開発などが課題として挙げられる。
統計
干天日数の平均は、生成サンプルとHeld Out 2の差と、Held Out 1とHeld Out 2の差はほぼ同程度の分布を示した。
熱波日数の平均も、生成サンプルとHeld Out 2の差とHeld Out 1とHeld Out 2の差がよく一致した。