本研究では、mmウェーブ帯(24.25 GHz - 27.5 GHz)における伝搬チャネルの特性を、無響室、残響室、屋内環境の3つの異なる環境で実験的に検証した。
まず、これらの環境で個別に伝搬チャネルの測定を行った。無響室では1本の直接波のみが受信され、残響室ではマルチパス伝搬が支配的、屋内環境では直接波とマルチパス波が混在する、といった特徴的な伝搬環境が再現された。
次に、これらの個別の伝搬チャネル測定結果を線形結合することで、より複雑な伝搬環境を合成した。これにより、単一の直接波と散乱波の組み合わせから、複数の強い反射波が重畳するような環境まで、多様な伝搬チャネルを再現することができた。
これらの合成チャネルに対して、独立変動二線モデル(IFTR)によるフィッティングを行った。IFTRモデルは物理的に解釈可能な4つのパラメータで伝搬チャネルを特徴付けることができ、無響室、残響室、屋内環境のいずれの場合でも高い精度でフィッティングできることが示された。特に、2つの主要な反射波の振幅差や変動度合いを表すパラメータが、各環境の特性を良く反映していることが確認された。
一方で、マルチパス伝搬が限定的な無響室環境の一部の合成チャネルでは、IFTRモデルの適用に限界があることも明らかになった。この場合、主要な2つの反射波の位相差分布が一様ではなくなるため、位相の統計的性質を考慮したGTR-Vモデルを適用することで、より良好なフィッティングが得られることが示された。
また、一部の残響室および屋内環境の合成チャネルでは、2つの主要な反射波の相互作用により鋭いバイモーダルな振幅分布が観測されたが、IFTRモデルではこれを十分に再現できないことが分かった。このような環境では、さらに高度な物理的モデリングが必要となる可能性がある。
総じて、本研究では、mmウェーブ帯の伝搬チャネルを物理的に解釈可能な少数のパラメータで精度良く特徴付けられるIFTRモデルの有効性を実験的に検証した。一方で、マルチパス伝搬が限定的な環境や、複雑な反射波の相互作用が生じる環境では、モデルの適用に限界があることも明らかにした。今後、より高周波数帯域や新たな伝搬環境での検証、さらに高度な物理モデルの開発が期待される。
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