核心概念
CAR T細胞の初期増殖と長期持続性は治療効果を予測するが、エフェクター細胞とメモリー細胞への分化メカニズムは不明であった。本研究では、標的抗原との相互作用によって引き起こされる非対称細胞分裂が、CAR T細胞の運命決定に重要な役割を果たすことを明らかにした。
要約
本研究では、CAR T細胞の分化と機能における非対称細胞分裂の役割を明らかにした。
- 標的抗原との相互作用によって引き起こされる非対称細胞分裂により、近位娘細胞と遠位娘細胞が生み出される。
- 近位娘細胞はエフェクター様の表現型を示し、強い細胞傷害活性を有する。一方、遠位娘細胞はメモリー前駆細胞様の表現型を示し、長期的な生存能力を持つ。
- 非対称細胞分裂によって、既存のmRNAの非対称的な分配と転写速度の変化が引き起こされ、近位娘細胞と遠位娘細胞の運命決定に関わる転写因子の発現パターンが大きく異なる。
- 近位娘細胞では増殖とエフェクター機能を支える転写因子群が発現するのに対し、遠位娘細胞では分化を抑制し長期生存を促す転写因子群が発現する。
- IKZF1遺伝子の破壊により、遠位娘細胞のin vivo での長期機能が低下することが示された。
以上より、非対称細胞分裂がCAR T細胞の分化と機能を決定する重要なメカニズムであることが明らかになった。この知見は、CAR T細胞療法の改善につながると期待される。
統計
CAR T細胞の初期増殖と長期持続性は治療効果を予測する。
非対称細胞分裂によって生み出された近位娘細胞と遠位娘細胞は、代謝プロファイルや転写因子発現パターンが大きく異なる。
IKZF1遺伝子の破壊により、遠位娘細胞のin vivo での長期機能が低下する。
引用
非対称細胞分裂によって、CAR T細胞の運命決定に関わる転写因子の発現パターンが大きく異なる。
近位娘細胞では増殖とエフェクター機能を支える転写因子群が発現し、遠位娘細胞では分化を抑制し長期生存を促す転写因子群が発現する。