本論文は、不安定な粒子の崩壊で生成されたニュートリノまたは反ニュートリノの質量固有状態間の量子コヒーレンスが、質量と運動量のエンタングルメントによって破壊されることを論じている。
従来のニュートリノ振動の解釈では、3つのフレーバー固有状態は、3つの質量固有状態のコヒーレントな重ね合わせとして解釈されてきた。そして、これらの固有状態に関連する確率振幅間の時間発展する位相差により、初期フレーバー固有状態は3つのフレーバー固有状態すべての重ね合わせに進化し、その集団は時間とともに振動するとされてきた。
しかし、著者は、ニュートリノの質量が運動量とエンタングルしている場合、質量固有状態間の量子コヒーレンスが破壊され、フレーバー振動が起こり得ないことを示した。これは、ニュートリノの質量に関する情報がその運動量にエンコードされており、原理的に運動量を測定することでニュートリノがどの固有状態にあるかを決定できるためである。
このデコヒーレンスは、位置表示でも説明できる。ニュートリノの波束のサイズよりも検出器のサイズの方がはるかに大きい場合、異なる質量固有状態に対応する運動量差によって引き起こされる位相因子の位置平均値はゼロになるため、質量固有状態の干渉効果は平均化されてしまう。
したがって、中性子のβ崩壊で生成された電子反ニュートリノの状態が3つの質量固有状態からなる場合、ニュートリノの質量自由度は、付随する粒子の運動量自由度またはニュートリノ自身の運動量自由度と必ずエンタングルする。この結論は、パイ中間子やミュー粒子など、他の不安定な粒子の弱い荷電カレント崩壊で生成されたニュートリノまたは反ニュートリノにも当てはまる。
このようなエンタングルメントは、原子炉ニュートリノと大気ニュートリノの振動が質量固有状態のコヒーレントな重ね合わせに起因する可能性を排除し、ニュートリノのフレーバー変換が異なるフレーバーを結合できると想定されるZボソン場の仮想励起に由来するという主張を裏付けている。
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