核心概念
がん遺伝子の発現調節に関与する転写因子のネットワークを網羅的に明らかにし、がん治療への応用可能性を示した。
要約
本研究では、700の がん関連遺伝子のプロモーター領域を網羅的にクローニングし、1,086個の転写因子(TF)とのDNA結合を網羅的に解析した。その結果、265個のTFと108個の がん遺伝子プロモーターとの1,350の相互作用を同定した。既知のChIP-seq実験やリテラチャーで報告されていた相互作用の半数以上を検出し、さらに多くの新規相互作用を見出した。
TFネットワークの解析から以下の知見を得た:
- 高度に連結したTFハブは予後良好遺伝子と予後不良遺伝子の両方に結合しており、これらをターゲットにすることは難しいと考えられる。
- 中程度に連結したTFは予後良好遺伝子または予後不良遺伝子に選択的に結合する傾向があり、これらをターゲットにすることで遺伝子発現バランスを調整できる可能性がある。
- 25の がん遺伝子の発現を抑制できる活性化型/両機能型TFを同定した。
- TF間の協調的および拮抗的相互作用が がん遺伝子の発現調節に重要な役割を果たすことが示唆された。
- 転写因子の不規則構造領域(IDR)がDNA結合能と転写活性化能に複雑な影響を及ぼすことを明らかにした。
以上より、本研究は がん遺伝子発現調節ネットワークの理解を深め、がん治療の新しい戦略につながる重要な知見を提供している。
統計
265個の転写因子が108個の がん遺伝子プロモーターに結合することを明らかにした。
265個の転写因子のうち、84個が転写活性化因子、33個が転写抑制因子、42個が両機能性因子であった。
25の がん遺伝子の発現を抑制できる活性化型/両機能型転写因子を同定した。
引用
「がん遺伝子の発現調節に関与する転写因子のネットワークを網羅的に明らかにし、がん治療への応用可能性を示した。」
「TFネットワークの解析から、高度に連結したTFハブは予後良好遺伝子と予後不良遺伝子の両方に結合しており、これらをターゲットにすることは難しいと考えられる。」
「25の がん遺伝子の発現を抑制できる活性化型/両機能型転写因子を同定した。」