核心概念
電子健康記録を用いた観察研究において、目標試験エミュレーションを行う際、適格基準となる変数に欠損があると選択バイアスが生じる可能性があり、その調整方法として逆確率重み付け法を提案する。
要約
電子健康記録を用いた目標試験エミュレーションにおける、適格基準欠損による選択バイアスの調整
この論文は、電子健康記録(EHR)を用いた観察研究における選択バイアス、特に目標試験エミュレーション(TTE)デザインにおける適格基準の欠損に焦点を当てています。
TTEは、観察研究を、関心のある因果関係を明らかにするランダム化比較試験(RCT)を模倣(エミュレート)するように設計・分析する手法です。EHRデータは、RCTのような厳密なデータ収集を目的としていないため、研究に必要な変数に欠損が生じることがあります。特に、研究対象集団の適格性を判断するための基準となる変数に欠損があると、選択バイアスが生じ、結果の妥当性が損なわれる可能性があります。
本論文では、TTE研究における選択バイアスに対処するための新しい概念的枠組みを提案し、特に時間-イベントエンドポイントに焦点を当てています。主な内容は次のとおりです。
EHRデータに見られる複雑さを反映したシミュレーション基盤を開発し、適格基準データの欠損が選択バイアスのリスクをもたらす一般的な状況を明らかにしました。
選択バイアスに対処するための統計的手法として、逆確率重み付け(IPW)を用いた推定および推論手順を提案しました。
シミュレーション研究を通じて、提案手法が選択バイアスを効果的に調整することを示しました。
カイザーパーマネンテのEHRデータベースを用い、2型糖尿病を有する重度の肥満患者を対象とした、減量手術が微小血管合併症に与える影響を評価する実証研究を行いました。