核心概念
本稿では、線形モデルにおける時変パラメータをカーネル回帰を用いて推定する際、バンド幅の選択が収束率と推定可能なパラメータの滑らかさの範囲にトレードオフの関係をもたらすことを示し、適切なバンド幅選択の指針を提供しています。
書誌情報
Nishi, M. (2024). Estimating Time-Varying Parameters of Various Smoothness in Linear Models via Kernel Regression. arXiv preprint arXiv:2406.14046v2.
研究目的
本研究は、線形モデルにおいて、滑らかな関数、ランダムウォーク、構造変化、閾値モデル、およびそれらの混合など、様々な滑らかさを持つ時変パラメータをカーネル回帰を用いて推定する方法を提案し、その漸近的性質を明らかにすることを目的とする。
方法
本研究では、時変パラメータの滑らかさを単一のパラメータα> 0で定量化し、このαを用いてカーネル回帰推定量の収束率と推定可能なパラメータクラスを分析する。具体的には、時変パラメータの滑らかさの程度に応じて適切なバンド幅を選択することで、推定量の一致性と漸近正規性を導出する。
主要な結果
時変パラメータの滑らかさを表すパラメータαが小さいほど、推定可能なパラメータのクラスは広がるが、収束率は遅くなる。
従来、滑らかな時変パラメータに対して用いられてきたT^-1/5オーダーのバンド幅は、ランダムウォークのような滑らかさの低いパラメータに対しては適切ではなく、バイアスをもたらす可能性がある。
ランダムウォーク型の時変パラメータに対しては、T^-1/2オーダーのバンド幅が適切であることが示された。
時変パラメータが滑らかな変化と急激な変化の両方を含む場合、バンド幅の選択によって、急激な変化が滑らかな変化に吸収されるか、バイアスをもたらすかが決まる。
結論
本研究は、カーネル回帰を用いた時変パラメータ推定において、バンド幅の選択が収束率と推定可能なパラメータクラスにトレードオフの関係をもたらすことを明らかにした。適切なバンド幅は、時変パラメータの滑らかさに依存するため、実証分析においては、パラメータの進化メカニズムを考慮したバンド幅選択が重要となる。
意義
本研究は、従来の研究では十分に検討されてこなかった、様々な滑らかさを持つ時変パラメータを統一的な枠組みで分析することで、カーネル回帰を用いた時変パラメータ推定の理解を深めた。
限界と今後の研究
本研究では、時変パラメータの推定に焦点を当て、予測や仮説検定などの他の統計的推論問題については検討していない。これらの問題への拡張は、今後の研究課題として残されている。