本論文は、デルペッツォ曲面のK3二重被覆上に存在する、分解不可能なモチーフサイクルの構成方法を論じた研究論文である。論文の構成は以下の通りである。
導入
著者は、佐藤氏の先行研究[Sat24]に触発され、本研究に着手した。佐藤氏は、滑らかな四次曲線で分岐するP2の四重被覆として得られる一般的なK3曲面において、28本の複接線を用いて分解不可能なモチーフサイクルを構成した。これは、四次曲線で分岐するP2の二重被覆が次数2のデルペッツォ曲面であり、28本の複接線が持ち上げられることで56本の(−1)曲線が得られることから、本論文の構成の特殊な場合となる。
関連する論文[Sre24]では、次数2のK3曲面(P2の、六次曲線で分岐する二重被覆の最小特異点解消として得られるもの)におけるサイクルの構成について論じている。これらのサイクルが存在するためには、有理曲線の数え上げ幾何学からの存在命題が必要であった。ここでのケースは、デルペッツォのK3二重被覆が次数2のK3として実現できるため、関連している。ここでの数え上げ幾何学的条件は、(−1)曲線の存在によって満たされる。論文の最後では、ItzyksonとGöttsche-Pandharipandeの研究[Itz94, GP98]により、いくつかの結果が知られているデルペッツォ曲面上の有理曲線のより一般的なケースについて考察する。
デルペッツォ曲面
このセクションでは、次数dの滑らかなデルペッツォ曲面Xdの分類、Xd上の(−1)曲線(自己交点数が-1の曲線)、およびXdのK3二重被覆について解説する。XdのK3二重被覆 ˜Zは、| −2KX|内の曲線Cで分岐する。ここで、KXはXdの標準束である。
モチーフサイクル
このセクションでは、曲面X上のモチーフコホモロジー群H3
M(X, Q(2))の元を構成する方法について説明する。特に、X上の2つの有理曲線Q1とQ2が2点P1とP2で交わり、fQ1がQ1上の関数でdivQ1(fQ1) = P1 −P2、fQ2がQ2上の関数でdivQ2(fQ2) = P2 −P1である場合、(Q1, fQ1) + (Q2, fQ2)はコサイクル条件を満たし、H3
M(X, Q(2))の元を決定する。
(−1)曲線からのモチーフサイクル
このセクションでは、デルペッツォ曲面の(−1)曲線を用いて、K3二重被覆 ˜Z上のモチーフサイクルを構成する方法について説明する。D1とD2を、P2内の曲線Q1とQ2の上にある2つの(−1)曲線とし、Q1とQ2が点Pで交わり、点sQ1、sQ2、tQ1、tQ2がすべて異なる場合、Q1、Q2、Pはモチーフコホモロジー群H3
M( ˜Z, Q(2))内のサイクルΞQ1,Q2,Pを決定する。
著者は、局所化シーケンスを用いて、これらのサイクルΞQ1,Q2,Pが一般的に分解不可能であることを証明している。
次数dのデルペッツォ曲面と退化軌跡
このセクションでは、サイクルΞQ1,Q2,Pが定義されない退化軌跡HQについて説明する。次数1、2、3のデルペッツォ曲面の場合について、HQの具体的な記述が与えられている。
結論
本論文では、デルペッツォ曲面のK3二重被覆上に存在する、分解不可能なモチーフサイクルの構成方法を提示した。この構成は、有理曲線が分岐軌跡とほとんどの点で二重に交わるという事実を利用している。退化軌跡は、これらの2つの点が一致する軌跡である。
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