核心概念
本研究では、Ni4Wが従来のスピンホール材料よりも優れた磁化スイッチング効率を示す、有望な非従来型スピン軌道トルク材料であることを実証しました。
要約
Ni4Wにおける多方向スピン成分を伴う巨大スピンホール効果:研究論文要約
書誌情報
Yang, Y., Lee, S., Chen, Y.-C., Jia, Q., Sousa, D., Odlyzko, M., Garcia-Barriocanal, J., Yu, G., Haugstad, G., Fan, Y., Huang, Y.-H., Lyu, D., Cresswell, Z., Low, T., & Wang, J.-P. (出版年不明). Ni4Wにおける多方向スピン成分を伴う巨大スピンホール効果. 掲載誌名, 巻(号), ページ.
研究目的
本研究は、低結晶対称性を有する材料であるNi4Wが、従来のスピンホール材料を超える高いスピン軌道トルク(SOT)効率を示すことを実証することを目的とした。
方法
- 第一原理計算を用いて、Ni4Wのバンド構造とスピンホール伝導度を調べた。
- マグネトロンスパッタリング法を用いて、Al2O3基板上にエピタキシャルNi4W薄膜を作製した。
- 作製したNi4W/CoFeBヘテロ構造を用いて、第二高調波ホール測定を行い、Ni4Wの電荷-スピン変換特性を評価した。
- 磁化ダイナミクスシミュレーションを行い、Ni4Wのスピンホール効果による磁化スイッチング効率を評価した。
主な結果
- 第一原理計算により、Ni4Wは大きなスピンホール伝導度を示し、特に(211)配向が優れたSOT特性を持つことが予測された。
- 実験的に作製したNi4W(211)薄膜は、第二高調波ホール測定により、面外(Z)スピン、ドレッセルハウス様(X)スピン、従来型(Y)スピンの3つのスピン成分を持つことが明らかになった。
- Ni4WのZスピンに由来する非従来型スピンホール伝導度は、室温で1.47 × 10^4 ħ/2e (Ωm)^-1と見積もられ、これは他の最先端の非従来型材料に匹敵する値であった。
- Ni4Wは、従来型スピンホール材料と比較して、最大で0.85という巨大な従来型ダンピング様効率(θ_DL^Y)を示した。
- マクロスピンシミュレーションにより、Ni4Wは、従来型および非従来型の他のSOT材料と比較して、磁化操作において優れた効率を持つことが示された。
結論
本研究では、Ni4Wが巨大なスピンホール効果と多方向スピン成分を示すことを実証した。特に、巨大な従来型ダンピング様効率と、他の非従来型材料に匹敵する非従来型スピンホール伝導度を示したことから、Ni4Wは、エネルギー効率の高いスピントロニクスデバイスの有望な材料となりうる。
意義
本研究は、Ni4Wが従来のスピンホール材料を超える高いスピン軌道トルク効率を示すことを実証した。これは、低消費電力、高速、高密度な次世代スピントロニクスデバイスの実現に向けて大きく貢献するものである。
制限と今後の研究
本研究では、Ni4W薄膜の厚さ依存性や電流方向依存性など、詳細な物性評価は行われていない。今後の研究では、これらの物性評価を行い、Ni4Wのスピンホール効果のメカニズムを解明する必要がある。
統計
Ni4WのZスピンに由来する非従来型スピンホール伝導度は、室温で1.47 × 10^4 ħ/2e (Ωm)^-1と見積もられた。
Ni4Wは、従来型スピンホール材料と比較して、最大で0.85という巨大な従来型ダンピング様効率(θ_DL^Y)を示した。
引用
"Ni4W exhibits the largest θ_DL^Y of all; it also displays sizable θ_DL^Z, surpassed only by TaIrTe4."
"Relative to TaIrTe4, switching efficiency is enhanced by an order of magnitude."
"Hence, the simultaneous presence of sizable multi-directional spins induced by Ni4W enables versatile and efficient field-free switching ferromagnetic thin films with PMA."