本研究では、放射性イオンビーム(RIB)を用いて初めて腫瘍治療に成功した。RIBは、従来の安定同位体ビームに比べて、PET信号対雑音比を約1桁改善し、線量ピークとの位置ずれを低減できるため、画像誘導粒子線治療に適している。
実験では、マウスの頸部に移植した骨肉腫を対象に、11Cイオンビームを用いて治療を行った。腫瘍は脊髄に近接しており、わずかな範囲誤差でも脊髄障害のリスクが高かった。しかし、リアルタイムのPET画像ガイダンスにより、20 Gyの高線量を照射しながら、脊髄への副作用を最小限に抑えることができた。
腫瘍は20 Gyの照射で完全に制御できたが、5 Gyでは2週間後に再発が見られた。これは、骨肉腫の高い放射線抵抗性によるものと考えられる。一方、X線照射では同線量で重篤な皮膚・脊髄障害が観察された。
放射性崩壊の経時変化(washout)の解析から、高線量照射では早期の血管障害が示唆された。これは、高線量単回照射療法(SDRT)の作用機序に関する知見を提供するものと考えられる。
本研究は、RIBを用いた腫瘍治療の実現可能性を初めて実証したものであり、臨床応用への道を開くものと期待される。今後は、より分解能の高い短寿命同位体の利用や、線量分布とPET信号の関係の改善などが課題として挙げられる。
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