核心概念
Kometは、サーバーレスコンピューティングとデータレプリケーションを活用することで、低軌道衛星エッジコンピューティングにおけるサービス移行に伴うダウンタイムを解消し、高可用性を実現するプラットフォームである。
摘要
論文情報
Tobias Pfandzelter and David Bermbach. 2024. Komet: A Serverless Platform for Low-Earth Orbit Edge Services. In ACM Symposium on Cloud Computing (SoCC ’24), November 20–22, 2024, Redmond, WA, USA. ACM, New York, NY, USA, 17 pages. https://doi.org/10.1145/3698038.3698517
研究目的
本論文は、低軌道(LEO)衛星ネットワークにおけるエッジコンピューティングサービスの課題である、衛星の移動に伴うサービス中断を解決することを目的とする。
手法
本論文では、サーバーレスコンピューティングの概念とデータレプリケーション技術を組み合わせた、Kometと呼ばれる新しいプラットフォームを提案する。Kometは、各衛星サーバー上にFaaSプラットフォームとデータベースシステムをホストし、クライアントに近いサーバー上でFaaS関数を動作させる。データはデータベースシステムに保存され、衛星間で複製されることで、クライアントが衛星を切り替えてもサービスを継続して利用できる。
主な結果
Kometは、従来のコンテナベースのエッジコンピューティングと比較して、サービス移行時のダウンタイムを大幅に削減できることを示した。また、Kometは、単一クライアント、複数クライアントによる単一サービスの共有、複数クライアントによる複数サービスインスタンスの共有など、さまざまなユースケースに対応できる柔軟性を備えている。
結論
Kometは、LEOエッジコンピューティングにおけるサービスの可用性と信頼性を向上させるための有望なアプローチである。サーバーレスコンピューティングとデータレプリケーションの組み合わせは、LEOエッジ環境におけるサービス管理の新しいパラダイムとなりうる。
意義
本研究は、LEOエッジコンピューティングの分野において、サービスの可用性と信頼性を向上させるための具体的なプラットフォームと手法を提示した点で意義深い。
制限と今後の研究
本研究では、Kometのスケーラビリティやセキュリティに関する詳細な評価は行われていない。また、より複雑なデータモデルやサービスオーケストレーション手法の検討も今後の課題として挙げられる。
統計資料
1,000MBのデータをコンテナで移行する場合、平均で35.7秒の遅延が発生する。
1,000MBのデータをKometで複製する場合、サービスのダウンタイムなしに複製が完了する。
Kometのデータ複製時間は、複製するデータサイズに比例して増加する。
Kometの最小複製時間は131msである。
単一クライアントのキャッシュサービス実験では、サービス複製は実験時間の約2.4%の間行われた。
IoT実験では、20分の実験中にKometはサービスを7回移行した。
CDN実験では、キャッシュされたリクエストの平均応答時間は21.58ms、キャッシュされていないリクエストの平均応答時間は46.44msであった。
CDN実験では、リクエストの34.8%がキャッシュから処理された。
単一クライアントのシミュレーションでは、MinMax戦略は20分間に16回のサービス移行を行ったのに対し、10%ヒューリスティックは12回、25%ヒューリスティックは9回の移行を行った。
IoTシミュレーションでは、MinMax戦略は20分間に113回のサービス移行を行ったのに対し、10%ヒューリスティックは5回、25%ヒューリスティックは3回の移行を行った。
引述
"LEO edge computing refers to the integration of edge computing resources with LEO satellites, i.e., placing processors and storage on communication satellites."
"A unique challenge of LEO edge computing is service orchestration: Orbital dynamics dictate that LEO satellites must move at speeds in excess of 27,000km/h in relation to Earth, which results in frequent (on the order of 4–5 minutes) client handovers."
"By explicitly decoupling compute and storage services, we can deliver a large variety of LEO edge application services with virtual stationarity without downtime."