核心概念
多オミクス解析と可溶性変化解析の統合により、新規抗菌薬の標的タンパク質と作用メカニズムを包括的に明らかにした。
摘要
本研究では、ヘリコバクター・ピロリ感染症に対する新規抗菌薬の作用機序を解明するため、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、可溶性変化解析(PISA)を統合的に実施した。
トランスクリプトーム解析とプロテオーム解析の結果、化合物ごとに異なる遺伝子発現と翻訳産物の変化が明らかになった。PISA解析では、主要な標的タンパク質として、ピロリ菌の病原性因子CagAや細胞分裂関連タンパク質FtsA/FtsZなどが同定された。
WGCNA解析により、これらの標的タンパク質が属するモジュールと化合物の相関が明らかになった。さらに、ROS産生や DNA損傷などの生物学的検証を行い、新規抗菌薬の作用メカニズムを包括的に解明した。
本研究は、多オミクス解析と可溶性変化解析を統合することで、既知の標的に加えて新規の標的を同定し、抗菌薬の作用機序を網羅的に理解する手法を示した。この手法は、ヘリコバクター・ピロリ感染症をはじめとする細菌感染症に対する新規治療薬の開発に貢献すると期待される。
統計資料
771個の遺伝子が化合物処理により差分発現した
113個のタンパク質が化合物処理により差分発現した
化合物IVとIVjはROS産生を大きく増加させた
化合物IV、IVa、IVjは酸素消費率を有意に低下させた
引述
"抗菌薬耐性は深刻な問題であり、年間500万人もの死亡者を出している。"
"ヘリコバクター・ピロリ感染症に対する新規狭域スペクトル抗菌薬の開発が喫緊の課題である。"
"標的特異的な変化と非標的効果を区別することが、薬剤作用機序解明の課題である。"