核心概念
バングラデシュは、国際送金を活用して対外債務を削減することで、スリランカのような債務危機を回避できた可能性があり、国際送金がバングラデシュの経済的レジリエンスに大きく貢献していることを示唆している。
摘要
本稿は、バングラデシュとスリランカにおける国際送金、外貨準備、対外債務の相互作用を分析し、バングラデシュがスリランカのような国家債務不履行を回避できた要因を探求した研究論文である。
- 研究目的: 近年の世界的な経済ショックの中で、バングラデシュとスリランカの対外債務状況に違いが生じた要因として、国際送金が果たした役割を明らかにすることを目的とする。
- 方法: 1973年から2022年までのバングラデシュとスリランカのタイムシリーズデータを用い、自己回帰分布ラグ(ARDL)モデルによる計量経済学的分析を行った。
- 主な結果:
- バングラデシュでは、国際送金の増加は対外債務の減少と関連しており、国際送金は対外債務削減に直接的に貢献している。
- バングラデシュでは、国際送金の増加は外貨準備の減少にもつながっており、これは「オランダ病」効果の存在を示唆している。
- スリランカでは、国際送金と対外債務の間に有意な関連性は認められなかった。
- バングラデシュは外貨準備を対外債務の担保として利用している一方、スリランカは「不況時」の対外債務返済のための保険として利用している。
- 結論:
- バングラデシュは、国際送金を活用して対外債務を直接的に削減するとともに、「オランダ病」効果を通じて間接的にも削減してきた。
- スリランカでは、国際送金は対外債務に有意な影響を与えておらず、これが両国の経済状況の差異の一因となった可能性がある。
- 本研究は、国際送金がバングラデシュの経済的レジリエンスに大きく貢献していることを示唆している。
- 今後の研究:
- バングラデシュにおける「オランダ病」効果の程度と、それが対外債務状況に与える影響について、より詳細な分析が必要である。
- 国際送金の効果を最大限に引き出し、経済の安定と成長を促進するための政策提言を行うことが重要である。
統計資料
バングラデシュでは、国際送金が1ドル増加すると、対外債務は約5セント減少する。
バングラデシュでは、外貨準備が1ドル増加すると、対外債務は約2セント増加する。
スリランカでは、外貨準備が1ドル増加すると、対外債務は約2ドル減少する。
バングラデシュのARDLモデルの決定係数は0.81であり、モデルの適合度が高いことを示している。
スリランカのARDLモデルの決定係数は0.56であり、モデルの適合度は中程度である。
引述
「バングラデシュは外貨準備を対外借入の担保として利用している一方、スリランカは「不況時」に備えて外貨準備を積み立てている。」
「国際送金は、バングラデシュがソブリン債務不履行を回避するのに役立った重要な要因の一つと見なすことができる。」