核心概念
LHCにおけるプロトン-プロトン弾性散乱断面積の運動量移行依存性のスケーリング特性は、QCD飽和理論の枠組みで予言される硬い弾性散乱振幅のスケーリング特性と非常によく一致する。これは、硬い散乱振幅がユニタリ化の過程を通してプロトン-プロトン弾性散乱振幅の基本ブロックとなっていることを示唆している。
摘要
最近、LHCにおけるプロトン-プロトン弾性散乱断面積のスケーリング特性が観測された。この特性は、QCD飽和理論の枠組みで計算される硬い弾性散乱振幅のスケーリング特性と非常によく一致する。
硬い弾性散乱振幅は、高エネルギーでの強い相互作用を記述するBalitsky-Kovchegov(BK)方程式の枠組みで計算できる。この振幅は、運動量移行と衝突エネルギーの比に依存するスケーリング特性を示す。
一方、実験で観測されたプロトン-プロトン弾性散乱断面積のスケーリング特性も、同様の形式で表すことができる。特に、スケーリング指数の値が非常によく一致することが分かった。
この一致は、硬い散乱振幅がユニタリ化の過程を通してプロトン-プロトン弾性散乱振幅の基本ブロックとなっていることを示唆している。ユニタリ化は運動量空間で行われ、実験で観測されたスケーリング特性を保持する必要がある。
この QCD 解釈では、スケーリング指数の値から二つのアプローチが考えられる。一つは、BK方程式の繰り renormalization group改善によるもので、もう一つは、中間ラピディティに位置する硬い散乱中心の寄与を考慮したものである。両アプローチとも、プロトン内部の高密度グルーオン領域("hot spots")の存在を示唆している。
統計資料
弾性散乱振幅の運動量移行依存性: A(s, s0, q^2, k^2) ∝ (s/q^2)^(γc) (s/s0)^(εc)
プロトン-プロトン弾性散乱断面積のスケーリング: dσ/dt(s, t) ∼ f(|t|^(γ) s^(ε))
飽和スケールの運動量移行依存性: Q_s^2(s) = |t| (s/s0)^(λs)
指数の値:
γc ≈ 0.74
λs ≈ 0.22
εc = γc λs ≈ 0.16
γ ≈ 0.72
ε ≈ 0.065
λ = ε/γ ≈ 0.09
引述
"The scaling properties of the cross-sections (1), (6) and of the characteristic energy dependence of the transfer momentum scale (2), (7) are very similar, taking into account that the kinematic range of validity variables is essentially the same, namely high c.o.m. energy and moderate momentum transfer."
"We are led to consider theoretical explanations in the QCD interpretation coming from the saturation approach of hard elastic scattering. The main point is to explain the factor of about 1/2 in the parameter λ with respect to λs."