核心概念
量子鍵配送(QKD)は、既存の光ファイバーネットワーク上に構築でき、商用データセンター環境においても安定した安全なデータ通信を実現できる可能性がある。
書誌情報
Qiu, K., Haw, J. Y., Qin, H., Ng, N. H. Y., Kasper, M., & Ling, A. (2024). Quantum-Secured Data Centre Interconnect in a field environment. Journal of Surveillance, Security and Safety, [Page numbers to be determined]. https://doi.org/ [DOI to be determined]
研究目的
本研究は、シンガポールの商用データセンター環境において、既存の光ファイバーネットワークを活用した量子鍵配送(QKD)の実証実験を行い、その技術的実現可能性と信頼性を評価することを目的とする。
手法
シンガポールの2つの商用データセンター間を、NetLink Trust社が提供する既存の光ファイバーネットワークで接続し、ID Quantique社のQKDシステム「Cerberis XGR Series」を用いて量子チャネルを構築した。
光ファイバーの全長は19.87km、損失は12.47dBであった。
QKDシステムの安定性と信頼性を評価するために、10日間にわたり秘密鍵レート(SKR)と量子ビット誤り率(QBER)を継続的に監視した。
QKDシステムを用いた安全なファイル転送を模倣するため、量子セキュアVPN(Q-VPN)アプリケーションを構築し、データセンター間でデータを暗号化して転送する実験を行った。
主要な結果
QKDシステムは、平均SKR 2.392kbps、平均QBER 2%未満という安定した性能を示した。
10日間の試験期間中、2ギガビット以上のAES-256鍵を生成することができ、これは1分あたり約690組の鍵生成に相当する。
Q-VPNアプリケーションを用いたファイル転送実験では、QKDシステムによって生成された秘密鍵を用いて、データセンター間でファイルを安全に転送することができた。
結論
本実証実験により、商用データセンター環境の既存の光ファイバーネットワーク上においても、QKDシステムが安定して動作し、安全なデータ通信を実現できる可能性が示された。
意義
本研究は、シンガポールにおけるQKDの普及に向けた第一歩となるものであり、実用的な量子セキュア通信のためのインフラストラクチャの強化に貢献するものである。
限界と今後の研究
本実証実験では2つのデータセンター間をポイントツーポイントで接続したが、将来的には複数のデータセンターを接続するマルチポイントQKDネットワークの構築が必要となる。
今後、高速単一光子検出器や集積型送受信機などの最新技術を用いることで、QKDシステムの性能をさらに向上させることが期待される。
Q-VPNアプリケーション以外にも、異なるOSI層におけるユースケースを検討していく必要がある。
統計資料
実証実験は、シンガポールの2つの商用データセンター間で行われた。
データセンター間は、全長19.87km、損失12.47dBの既存の光ファイバーネットワークで接続された。
QKDシステムは、平均SKR 2.392kbps、平均QBER 2%未満という安定した性能を示した。
10日間の試験期間中、2ギガビット以上のAES-256鍵を生成することができ、これは1分あたり約690組の鍵生成に相当する。
Q-VPNアプリケーションは、10秒ごとに鍵を更新する。