核心概念
単一チップミリ波レーダーを用いて、位相ベースのアプローチにより、従来のドップラー分解能の限界を克服し、ロバストな自己速度推定を実現する。
摘要
本研究では、mmPhase と呼ばれる自己運動推定フレームワークを提案している。mmPhase は、単一チップミリ波(mmWave)レーダーを使用し、位相ベースの速度推定アプローチを採用することで、従来のドップラー分解能の限界を克服している。
具体的な手順は以下の通りである:
- 収集した生ADCデータから、レンジFFTを適用し、潜在的な反射体のある上位Nピークのレンジビンを選択する。
- フレーム間でレンジビンの一貫性を確認し、静的な反射体を動的な反射体から分離する。
- 選択したレンジビンの位相値を収集し、位相アンラッピングを行う。
- 位相と距離の関係から、位相変化率から自己速度を推定する。この位相ベースのアプローチにより、従来のドップラー分解能の限界を克服し、より高精度な速度推定が可能となる。
提案手法 mmPhase は、ドップラーベースのアプローチ、IMUベースのオドメトリ、および事前学習済みのmilliEgoモデルと比較して、速度推定の平均絶対誤差が4倍小さいことを示している。特に低速域での性能が優れており、ドップラーベースのアプローチでは捉えきれない微小な速度変化も推定できることが確認された。
今後の展望として、複数の静的/動的物体、遮蔽物、部屋設定などを含む環境でのさらなる検証、物理法則を組み込んだニューラルネットワークによる速度推定手法の検討などが挙げられる。
統計資料
位相変化率と自己速度の関係は以下の式で表される:
dφ/dt = 4πvb/λ
ここで、φは位相、vbは自己速度、λはミリ波の波長である。
典型的な位相変化率Δφ = 0.057°は、波長λがミリ波領域であることから、1.23 cm/sの速度分解能を実現できる。これは、従来のドップラー分解能3.41 cm/sを大きく上回る。