本論文は、乳房放射線療法における皮膚線量計算のための新しいフレームワークを提案し、その有効性を検証した研究について報告している。
乳房がんは女性において最も一般的な癌であり、放射線療法は主要な治療法の一つである。しかし、放射線療法においては、皮膚や皮下組織への線量が高くなり、急性毒性(熱傷)を引き起こす可能性がある。皮膚への正確な線量を推定することは、これらの副作用を軽減するために重要となる。しかし、皮膚への線量計算は、空気と組織の界面における治療計画システム(TPS)の精度不足、計算時間の制約による計算グリッドサイズの妥協、治療中および治療期間中の呼吸や乳房の腫脹による乳房形状の変化など、多くの課題が存在する。
本研究では、これらの課題を克服するために、モンテカルロ線量計算ツールと、治療セッション中に記録された3D表面データを用いた乳房変形アルゴリズムを組み合わせた計算フレームワークを開発した。このフレームワークは、以下の2つの主要な機能を提供する。
本研究では、2019年から2020年にかけてICANSで実施された臨床試験に参加した60人の患者から取得したデータセット(MorphoBreast3D)を使用した。これらのデータには、治療計画に使用された患者のCT画像(皮膚を含む臓器の輪郭を含む)、TPSによって計算された線量マップ、およびArtec Eva 3Dハンドヘルドスキャナーを使用して異なる治療セッションで取得された患者胸部の3Dサーフェスメッシュのセットが含まれている。
まず、CTスキャンから取得した3Dサーフェス(Minit)と、治療セッション中に取得した3Dサーフェス(Ms)の間で、頂点ごとの対応付けを行った。次に、2つのサーフェスを整列させて対応する頂点を接続することにより、変形ベクトル場を計算した。次に、サーフェスMinitとCT画像を剛体的に位置合わせすることで、変位ベクトル場をCT画像に転送した。最後に、放射基底関数(RBF)を用いて変形CT画像を取得した。
変形された乳房形状を含むCT画像は、TPSグローバル線量計算とGATEモンテカルロ皮膚線量計算の両方に入力される。治療セッション中の乳房の正確な形状でTPSを使用して線量マップを再計算することで、初期線量計画からの逸脱を調べることで、治療の再計画が必要かどうかを医師が推定できるようになる。モンテカルロツールによる皮膚への線量計算は、最初の1mmの組織に対するTPS計算に追加情報を提供し、過小評価や過剰評価、ホットスポットなど、変形が皮膚への線量分布に与える影響を正確に調査するために使用される。
本研究では、2人の患者に対して開発したフレームワークを適用した。これらの患者では、平均約5mmの乳房変形場の長さが得られた。各患者について、5つの変形CT画像(D+5、D+10、D+15、D+20、D+25)に対してAcuros TPSおよびGATE MCツールを用いて線量マップを計算し、元の治療計画の線量マップと比較した。
本研究で得られた結果は、開発したフレームワークが乳房放射線療法における皮膚線量計算のための有望なツールであることを示唆している。本フレームワークは、以下の点で従来の方法よりも優れている。
本研究では、3Dスキャナー画像から得られた乳房の変形を考慮して、各セッションで皮膚線量を体系的に再計算できるようにするフレームワークを開発した。このフレームワークは、変形ベクトル場(DVF)駆動CT画像に基づいてモンテカルロ皮膚線量計算を可能にする。最初の患者における結果とSGRT画像の利用可能性は、治療中の再計画の決定において放射線療法士や医学物理士を支援し、治療の精度を向上させ、副作用の誘発をよりよく理解するための有用なデータを作成するための、この非電離放射線法の将来的な臨床使用を示唆している。
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