本論文は、結び目不変量の理論、特にバシリエフ不変量と量子結び目不変量の関係を探求しています。ジョーンズ多項式に代表される量子結び目不変量は、3次元量子Chern-Simons理論とも関連しており、低次元トポロジーの研究において重要な役割を果たしています。
バシリエフ不変量は、結び目を特異結び目へと拡張し、特異点の数に関する帰納的な関係式を用いて定義されます。バシリエフ不変量は、コード図と呼ばれる組み合わせ的な対象と密接に関係しており、コード図の空間上の線形関数であるウェイトシステムを通じて研究されます。
本論文では、任意の有限次元リー代数に対して、そのウェイトシステムのカーネル、つまりウェイトシステムによってゼロに写されるコード図の集合を構成する方法を開発しています。この方法の鍵となるのは、ピエール・フォーゲルによって導入されたΛ代数とその上の指標です。Λ代数は、AS関係式とIHX関係式を満たす3価の固定図によって生成される代数であり、リー代数の構造定数と密接に関係しています。
フォーゲルは、Λ代数上の指標を用いて、任意のリー代数に対して、そのウェイトシステムのカーネルに属するヤコビ図を具体的に構成する方法を示しました。本論文では、この方法を応用し、slNウェイトシステムのカーネルに属する低次のヤコビ図を具体的に構成しています。
本論文で開発された方法は、リー代数ウェイトシステムのカーネルを系統的に構成するための強力なツールを提供します。これらのカーネルは、量子結び目不変量では検出できないバシリエフ不変量に対応しており、結び目不変量の理論におけるさらなる研究のための興味深い方向性を示唆しています。
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