Core Concepts
C. thermocellumのAdhEタンパク質複合体は、アセトアルデヒドなどの毒性中間体を効率的に隔離・チャネリングする拡張構造を形成することで、エタノール生産を最適化する。
Abstract
本研究では、C. thermocellumのAdhEタンパク質複合体の高分解能構造解析を行い、その機能的特徴を明らかにした。
まず、C. thermocellumのAdhEは、E. coliのAdhEとは異なり、主に拡張構造のスピロソーム(螺旋状複合体)を形成することを見出した。この拡張構造は、塩橋や水素結合が多く、より安定な構造であることが示された。
次に、AdhEスピロソーム内部に、ALDH活性部位とADH活性部位を連結する封鎖チャネルが存在することを明らかにした。分子動力学シミュレーションの結果、この拡張構造のチャネルでは、アセトアルデヒドなどの毒性中間体の滞在時間が長く、効率的に隔離・チャネリングされることが示された。一方、より収縮した構造では、チャネルが開放されており、中間体が早期に溶媒相に逸脱してしまうことが明らかになった。
以上より、C. thermocellumのAdhEは、拡張構造のスピロソームを形成することで、エタノール生産の際に生じる毒性中間体を効果的に制御・隔離し、生産性の向上に寄与していると考えられる。本研究は、AdhEの構造と機能の関係を詳細に解明し、バイオ生産プロセスの最適化に向けた基盤を提供するものである。
Stats
AdhEスピロソームの拡張構造と収縮構造では、チャネル内部のアミノ酸組成に大きな違いがある
拡張構造のスピロソームでは、アセトアルデヒドの滞在時間が収縮構造に比べて著しく長い
Quotes
"C. thermocellumのAdhEは、拡張構造のスピロソームを形成することで、エタノール生産の際に生じる毒性中間体を効果的に制御・隔離し、生産性の向上に寄与している"
"本研究は、AdhEの構造と機能の関係を詳細に解明し、バイオ生産プロセスの最適化に向けた基盤を提供するものである"