Core Concepts
アラジル症候群のマウスモデルでは、胸腺細胞と肝細胞の分化異常が相互に作用し、肝線維化の過程を決定する。
Abstract
本研究では、アラジル症候群(ALGS)のマウスモデルであるJag1Ndr/Ndrマウスを用いて、肝臓と免疫系の相互作用が肝線維化に及ぼす影響を明らかにした。
主な知見は以下の通り:
Jag1Ndr/Ndrマウスは、ALGSに特徴的な細胞周囲性線維化と門脈圧亢進を再現した。
新生児期のJag1Ndr/Ndr肝臓では、肝細胞の未熟化と肝内T細胞の減少が観察された。
Jag1Ndr/Ndr胸腺では、二重陽性T細胞の減少と制御性T細胞の増加が見られた。
Jag1Ndr/Ndr T細胞を移入したマウスでは、胆管結紮による肝線維化が軽減された。これは、Jag1Ndr/Ndr T細胞の抗炎症作用と制御性T細胞の増加によるものと考えられる。
ALGSの患者検体でも、肝細胞の未熟化と制御性T細胞の増加が確認された。
以上より、Jag1の変異は肝細胞の分化と免疫系の発達を同時に障害し、それらの相互作用が肝線維化の経過を決定することが示された。この知見は、ALGSの肝疾患の病態理解と治療法開発につながる可能性がある。
Stats
肝臓のSirius Red陽性面積は、Jag1Ndr/Ndrマウスでは生後10日齢で有意に増加し、30日齢でさらに増加した。
Jag1Ndr/Ndrマウスの脾臓は生後10日齢から肥大化が認められた。
Jag1Ndr/Ndr肝臓では、生後10日齢の時点で肝細胞マーカーCyp1a2の発現が野生型の1.7倍低下していた。
Jag1Ndr/Ndr肝臓では、生後10日齢の時点でEgr1とその標的遺伝子(Cxcl1、Cxcl2、Cxcl10、Ccl2、Serpine1、Isg20、Plaur)の発現が軽度上昇していた。
Jag1Ndr/Ndr→Rag1-/-マウスの肝臓では、胆管結紮による線維化が野生型移植マウスの3分の1まで抑制されていた。
Quotes
「Jag1Ndr/Ndr肝細胞は、コレステロール誘導性の炎症に対して十分な活性化応答を示せない可能性がある」
「Jag1Ndr/Ndr T細胞は、腸管炎症に対する反応性が低下しているが、正常な恒常性維持能力を有している」
「Jag1Ndr/Ndr T細胞の移入は、胆管結紮による肝線維化を著しく抑制した」