Core Concepts
ミクログリアの老化は、ストレス応答や翻訳関連の中間状態を経て炎症性活性化に至り、それが認知機能低下につながる。
Abstract
本研究では、マウスのヒッポカンパスにおけるミクログリアの老化過程を単一細胞RNA-Sequencingにより解析しました。その結果、ミクログリアは、ホメオスタシス状態から炎症性活性化状態へと段階的に移行していくことが明らかになりました。
具体的には、以下のような中間状態が観察されました:
ストレス応答関連遺伝子(Tgfb1など)の一過性の発現上昇
リボソーム関連遺伝子の発現上昇
これらの中間状態は、ミクログリアの老化に伴う炎症性活性化の進行を制御する重要なチェックポイントとして機能していることが示唆されました。
さらに、成体ミクログリア特異的にTgfb1を欠損させたマウスでは、ミクログリアが炎症性の老化状態に早期に移行し、ヒッポカンパス依存的な認知機能の低下が観察されました。
以上より、ミクログリアの老化過程における中間状態の制御が、認知機能の維持に重要な役割を果たすことが明らかになりました。この知見は、加齢に伴う神経変性疾患の予防や治療につながる可能性があります。
Stats
ミクログリアにおけるTgfb1発現は加齢とともに一過性に増加する。
ミクログリアにおけるリボソーム関連遺伝子の発現は加齢とともに増加する。
Tgfb1欠損ミクログリアでは、炎症関連遺伝子の発現が増加する。
Quotes
Tgfb1欠損によりミクログリアが炎症性の老化状態に早期に移行する。
Tgfb1欠損マウスでは、ヒッポカンパス依存的な認知機能の低下が観察される。