Core Concepts
抗菌薬ストレス下においても、Mycobacterium smegmatisの遺伝子変異率は顕著に増加せず、DNA修復機構の活性化によって遺伝的安定性が維持されている。
Abstract
本研究では、結核治療に用いられる第一線抗結核薬(イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミド)およびシプロフロキサシンを用いて、Mycobacterium smegmatisの遺伝的安定性を評価した。
まず、各薬剤の亜致死濃度を決定し、細胞形態の変化を確認した。次に、薬剤ストレス下で160系統の変異蓄積株を培養し、全ゲノムシーケンシングによる変異解析を行った。その結果、薬剤ストレス下でも変異率の有意な上昇は認められず、最大で1系統あたり1つの新規変異が検出されたにすぎなかった。
さらに、DNA修復遺伝子の発現解析を行ったところ、第一線薬の併用処理では塩基除去修復やDNA二本鎖修復経路の顕著な活性化が観察された。一方で、dNTP pool解析では、薬剤ストレスによる核酸前駆体の不均衡が認められた。
以上の結果から、Mycobacterium smegmatisでは、薬剤ストレス下においても、DNA修復機構の活性化によって遺伝的安定性が維持されていることが示された。一方で、表現型レベルでの適応性の獲得は迅速に起こることが明らかとなった。
Stats
細胞1個あたりのdATP濃度は、シプロフロキサシン処理により約7倍増加した。
細胞1個あたりのdTTP濃度は、シプロフロキサシン処理により約7倍増加した。
細胞1個あたりのdGTP濃度は、全ての薬剤処理で減少した。
Quotes
「抗菌薬ストレス下においても、Mycobacterium smegmatisの遺伝子変異率は顕著に増加せず、DNA修復機構の活性化によって遺伝的安定性が維持されている。」
「一方で、表現型レベルでの適応性の獲得は迅速に起こることが明らかとなった。」