Core Concepts
側方抑制は初期の細胞集団から規則的なパターンを生み出すが、その対称性の破れと運命決定の過程は明らかではなかった。本研究では、生きた個体を用いた定量的な観察により、低レベルのScute発現時に対称性が破れ、細胞間のScute発現の違いが運命決定を促進することを示した。
Abstract
本研究は、ドロソフィラの腹部における感覚器前駆細胞(SOP)の選択過程を、生きた個体を用いた定量的な観察により解明したものである。
まず、腹部の発生過程を観察し、SOPが後方から前方に向けて順次選択されていくことを明らかにした。次に、SOPの運命決定に関わるプロニューラル因子Scuteの動態を追跡したところ、以下の知見が得られた:
Scuteの発現は低レベルの段階で対称性が破れ、SOPと非SOP細胞の運命が分岐し始める。この対称性の破れは、Scuteの発現レベルの細胞間変動によって促進される。
SOPの選択は、Scuteの発現が高まる前の早期の段階で起こる。一方、非SOP細胞におけるScuteの発現は選択後も一定の水準を保ち、急激な減少は見られない。
細胞間接触面積の違いは、SOPの選択に影響を与えない。
稀に、隣接するSOP同士が一時的に観察されるが、その後の細胞配置の変化によって修正される。
以上の結果は、側方抑制における細胞運命決定の動態を詳細に明らかにしたものである。特に、Scuteの発現レベルの細胞間変動が運命決定を促進するという知見は、側方抑制のメカニズムを支持するものである。
Stats
SOPの選択は、Scuteの発現レベルが低い段階で起こる。
SOPの選択から分裂までの時間は約4.5時間である。
隣接するSOP同士が一時的に観察される頻度は約10%である。
Quotes
"側方抑制は初期の細胞集団から規則的なパターンを生み出すが、その対称性の破れと運命決定の過程は明らかではなかった。"
"本研究では、生きた個体を用いた定量的な観察により、低レベルのScute発現時に対称性が破れ、細胞間のScute発現の違いが運命決定を促進することを示した。"
"細胞間接触面積の違いは、SOPの選択に影響を与えない。"